平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #116

「装のマネジメント」~オシャレは、「精神の自己表現」である

 

若い頃のカエサルは大変なオシャレであったという。古代ローマで着用されていた長衣や短衣の布地や色、はてはベルトの締め金のデザインにまでこだわったそうだ。人類史上最高にモテた男とも言われる彼の魅力の一端はそのファッション・センスにもあったのだろう。
もちろん人間の魅力は外見だけではないが、リーダーにとってはファッションも重要な要素である。古いと言われればそれまでだが、私は、ホリエモンにどうしても社長をイメージすることができなかった。いつもTシャツをはじめとしたカジュアルな格好だったからである。
では、スーツを着ればよいのかというと、スーツを着た方がふさわしい場ではスーツを着る。Tシャツでも構わない場では、Tシャツを着ればよい。要は、時と場合、つまりTPOをわきまえた服装を心がけることが必要なのだと思う。フォーマルな服装が求められる場でも常にカジュアルというのは、かえって肩に力が入っていてカッコ悪い。
またまた古いと思われそうだが、私は社長に就任した日から、ビジネスの場では、必ず三つ揃いのスーツを着ることにしている。かつては夏でも三つ揃いだったが、さすがにクールビズ全盛の昨今では、夏だけはベストを外している。私が尊敬し、憧れる経営者の方々に三つ揃いの方が多かったせいだ。
ネクタイを締めると、気合いが入り、ベストを着けると、心身ともに引き締まる。ビジネス・コンサルタントの山崎武也氏によれば、ビジネス社会においてスーツはユニフォームであるという。ネクタイをきちんと締めていれば、真面目に仕事に取り組む姿勢を示したことになる。うさんくさい人もネクタイをしていれば、少なくとも表面的にはまずは真面目な人であろうと見られるのだ。
しかし、リーダーは真面目なだけでは駄目で、ある程度の遊び心も求められる。堅苦しいだけの人間より、感性の豊かな人と思われた方がいいに決まっている。ネクタイの色やデザインも大事だが、私の場合は社会人になってからずっとスーツには必ずポケットチーフを合わせている。私が入った広告業界にはポケットチーフをしたカッコいい先輩が多かったためである。別に普段から贅沢をしているつもりはないが、ポケットチーフだけは新しい色を見つけると必ず買うので、もう何百枚もたまってしまった。だから、どんな色のネクタイにでも合わせられる自信がある。
別に私にはセンスがあるわけではない。でも自分のスタイルには真剣に取り組んでいる。コーディネートの正誤を追いかけていても始まらない。オシャレは精神の自己表現であると気づいておきたい。