平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #084

「与のマネジメント」~惜しみなく人に与える者が、モテ

 

「他人に与えるものの多い人が、より多くを得る」というのは、人生の法則の1つだ。
ここで注目すべきは、「多くを得る」という点である。これは、何も金銭的な報酬を売ることに限らない。むしろ、多くの人々に感謝される場合だとか、自分ではなくて家族や子孫が恩恵を受ける場合もある。
よく「ギブ・アンド・テイク」という言葉が使われる。これは一見すると、「多くを与える者は、多くを得る」という法則と同じようだ。しかし、実は2つの考えは対極に位置している。ギブ・アンド・テイクの方は「~が欲しいから」という前提があっての「~を提供しよう」、つまり「与えよう」である。
一方、「多くを与える者は、多くを得る」という方は、「~を得よう」という前提から出発してはいない。その人は、ただただ提供する人である。見返りや報酬を期待しながら、与えてはいない人である。
新進気鋭の評論家、福田和也氏は「どうすれば、モテるか」ということを考え抜いた結果、「与える」という行為が重要な意味を持つことを悟ったという。モテる人間は実在する。彼らは、なぜモテるのだろう。それは、彼らが贈与関係を巧みに利用しているからだと福田氏は言う。多くの人は認めたくないかもしれないが、若い人を見回してみても、男女を問わず、お金を持っている、あるいは、お金を持っていると思わせることに長けた人たちが、ある意味モテていることは確かである。彼らは、より多くを与えうるという期待を周囲に抱かせるのだ。
これは、金銭だけではなく、性についても同様である。例えば、若い頃は、デートに気軽に応じてくれる、簡単に体を許してくれる、そういう期待を抱かせる女性がモテていたことは事実だ。これもひとつの贈与関係である。
知性というのも武器になりうる。この人とつきあうと、自分も頭が良くなるんじゃないか、それは無理でも、つきあっているという事実だけで、自分まで知的に見えるような満足感を得ることができる。
強い男や優しい女に魅力を感じる人も多いだろう。この場合は、安心感を与えるわけである。要するに、あげるものがなければモテない。「持てる」人が「モテる」ということなのだ。そして、これは精神論のみならず、物理的な意味でも真理である。つまり、プレゼントのことだ。ケチよりもプレゼント魔に人気者が多いというのも人類普遍の法則である。