平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #065

「別のマネジメント」~別れ際に本性が出る

 

男の本性は女との別れ際ではっきりするという。野村證券の会長を務めた、かつて金融界の雄の一人であった奥村綱雄氏は、「本来、男と女はほっといてもくっつくものだが、しかし、別れ際ほど男の本性がはっきりするものはない。冷たい男は冷たい別れ方をする。唯物主義者の男は札で頬を張るような別れ方をする。情けのある男は、同じ別れ方でも、わきから見ていても涙を誘うような切たるものがある。男が露骨に本性をあらわすのはあとの別れ際だから、その男をしっかり見極めねばならない」と言っている。
たしかに、幼稚な男は幼稚な別れ方しか、わがままな男はわがままな別れ方しか、臆病な男は臆病な別れ方しかできないだろう。ならば、理想の別れ方とは何か。私は、別れる際に、たとえ痩せ我慢であっても「楽しい時間をありがとう」と握手して別れる映画のような別れ方が理想的だとずっと思っていた。
しかし最近になって、究極の別れ方とは別れないことであることに気づいた。古今東西を見渡して、女に最高にモテた男といえば、海外ではカエサル、国内では坂本龍馬が思い浮かぶが、2人ともこの究極の別れ方を知っていたようだ。
史実によると、どうやらカエサルは次々とモノにした女たちの誰一人をも決定的に切らない、つまり関係を清算しなかったようである。20年もの間公然の愛人であったセルヴィーリアには、愛人関係が切れた後でも、彼女の願いならば何でもかなうように努めた。他の女たちにも同様で、イタリアの某作家によれば、カエサルこそは「女にモテただけでなく、その女たちから一度も恨みをもたれなかった稀有な才能の持主」であった。
龍馬もしかり。彼には全国に数多くの恋人やセックス・フレンドがいたようだが、すごいのは女たちがみな「私だけが龍馬の女」と思い込んでいたことだった。正式な妻としたおりょうは別としても、千葉道場で龍馬と一緒に稽古した千葉さな子なども生涯「私は坂本龍馬の妻でした」と語っていたという。
別に男と女だけが別れではない。経営者と社員、上司と部下との別れもある。最近、個人情報保護法がらみなどで、元社員の犯行というのがよく目につくが、企業の辞めさせ方にも問題があるのではないか。かつて当社でも問題社員を辞めさせたところ、逆恨みされて、同業者や監督官庁などに対して誹謗中傷され、痛い目にあった経験がある。それ以来、社員が退職するときは必ず送別会を開き、退職後もOB会のような形で絶えず連絡を取るように心がけている。