平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #026

「導のマネジメント」〜真のリーダーシップとは何か

 

 人を導く者を日本語で指導者、英語でリーダーという。リーダーに求められるのがリーダーシップだと一般には思われている。しかし決して誤解してはならないことは、リーダーシップはいわゆる管理職の人間だけに必要なのではなく、会社なら社員全員が持つべきものなのである。
リーダーシップとは、人間の生き方そのものに関わっている。組織の階層構造は人間がつくったものだ。それは、ときとしてリーダーシップのあり方を型にはめ、人が生まれながらに持っている貴重な才能を押し殺してしまうことがある。けれども、そのような状況のもとでも、リーダーシップを発揮することは誰にでもできる。では、どうすれば自分の可能性を引き出し、伸ばすことができるのだろうか。
それは、こういう問いにつながる。あなたの仕事は、人生を注ぎ込むに値するものだろうか。これほど大事な問題を、あなたはどう考えているのだろうか。これは人間としての根本的な問いであり、一人ひとりの人生に関わる問いでもある。誰もが、人の役に立ちたいと心の底で思っている。自分の存在が他人のやる気をくじいているのか、それとも逆に活気づけているのかということに、無関心でいてよいのだろうか。
リーダーシップの本質とは、意義あるビジネスを生み出すこと、さらに言えば、意義ある人生を生み出すことにある。過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる。変えられるのは自分だけであり、自分だけが自分を変えられるのである。自分の一番よいところを引き出すこと、自分の周囲に人々がのびのびと成長できるような環境をつくってあげること、これが真のリーダーシップではないだろうか。
果敢に行動を起こし、みずから先頭に立ち、後に続く人々を励まし、他人の一番よいところをほめてあげること。これが人生のあらゆる場面に役立つリーダーシップの要諦なのだ。
ローマ史に詳しい作家の塩野七生氏は、リーダーとして成功できる男の最重要条件について述べている。それは、イタリア語ではセレーノ、日本語では晴朗な雰囲気を醸し出すことであるという。あのハンニバルを打ち破ってローマを勝利に導いたプブリウス・コルネリウス・スキピオは、若い頃からこれを完全に持っていたという。彼が演壇の上に立っただけで、人々にはこの若者を支持したい気持ちがわいてきたというのだ。リーダーたる者、いつも「晴朗」であることに努めたい。