平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #094

「知のマネジメント」~知識は専門家してこそ意味を持つ

 

ピーター・ドラッカーといえば、ウィーン生まれで、現在アメリカのクレアモント大学院の教授を勤める。90代半ばにして世界最高の経営学者であり、「マネジメント」という考え方そのものを発明し、ビジネス界に最も影響力を持つ思想家でもある。
そのドラッカーが幾多の著書で一貫して唱えているのが「知識社会」の到来である。7000年前、人類は技能を発見した。その後、技能が道具を生み、才能のない普通の者に優れた仕事をさせ、世代を超えていく進歩を可能にした。技能が労働の分業をもたらし、経済的な成果を可能にしたのである。
紀元前2000年には、地中海東部の灌漑文明が、社会、政治、経済のための機関と、職業と、つい200年前までそのまま使い続けることになった道具のほとんどを生み出した。まさに技能の発見が文明をつくり出したのである。そして今日、再び人類は大きな発展を遂げた。仕事に知識を使いはじめたのだ。ドラッカーは、仕事の基盤が知識に移ったと述べている。
ここで言う知識とは、仕事の基になる専門知識のことである。専門知識の上に成り立つ職業といえば、医師や弁護士や公認会計士やコンピュータ・プログラマーなどがすぐ思い浮かぶが、実は冠婚葬祭業である当社も知識産業であると私は思っている。
例えば、国家資格である1級葬祭ディレクター。この試験用に使う『葬儀概論』という電話帳のように分厚いテキストを通読してみて驚いた。想像以上に内容が高度で、かつ範囲が広い。仏教の各宗派の教義・作法はもちろん、宗教全般、儀礼全般に医療、法律、税務といった分野まで含まれているのである。これはもう大変な知識産業である。その1級ディレクターの人数および合格率が日本でトップということで、非常に誇りに思っている。
1級葬祭ディレクターほどの難易度は現在のところないが、ブライダル・プロデューサーにも同じことが言える。さらには、料理、衣装、写真、司会と当社のあらゆる仕事は高度な専門知識に基づく知識産業であると認識している。ドラッカーも、「いかなる知識も、他の知識より上位にあることはない。知識の位置づけは、それぞれの知識に固有の優位性や劣位性によってではなく、共通の任務に対する貢献によって決定される。『哲学は科学の女王』と言う。だが腎臓結石の除去には、論理学者よりも泌尿器専門医を必要とする」と述べている。