平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #121

「熱のマネジメント」~熱意の習慣化が、成功の条件となる

 

だれでも成功を願わない人はいないだろう。成功するための条件はいろいろとあるだろうが、何よりもまず「熱意」というものが求められることに異論はないと思う。イギリスの歴史家トインビーは「無気力を克服できるのは熱意のみである」と語り、アメリカの思想家エマーソンは「偉大なことで熱意の力なしで成し遂げられたものは一つもない」と言っている。
熱意とは、明りをともす火力発電機のようなもので、人間を動かし、偉大な業績へと導くものだ。眠っているエネルギー、才能、活力を揺り起こし、目標に向かって突進させる力であり、内から溢れ出る力である。人生で熱意を動力源として使う秘訣、それはまず熱意のあるように行動することである。熱意を習慣化してしまうのである。
熱意のある人間は、驀進する蒸気機関車だ。あのエネルギーを出すためには、車庫で休んでいるときでも、釜が冷えないようにせっせと石炭を燃やし続ける必要がある。
エドワード・B・バトラーは「誰でも、ときには熱心になるものである。ある人は熱意を持つのがたった30分間であり、ある人は30日間である。しかし、人生で成功するのは30年間の熱意を持ち続ける人間である」と指摘した。
30年間といわず、もっと長期間にわたって熱意を持ち続け、大成功した人が松下幸之助である。彼は、成功の第一条件に「熱意」をあげることが多かった。熱意などという平凡な条件こそが、成功するための第一歩であり、同時に最も大切なものであると考えていたのである。PHP総合研究所社長の江口克彦氏によれば、松下幸之助はよく次のように言っていたという。
仕事をする、経営をするときに、何が一番大事かと言えば、其の仕事を進める人、その経営者の、熱意やね。溢れるような情熱、熱意。そういうものをまずその人が持っておるかどうかということや。熱意があれば知恵が生まれてくる」
たとえば、何としてでもこの2階に上がりたいという熱意があれば、ハシゴというものを考えつく。ところが、ただ何となく上がってみたいなあと思うぐらいでは、ハシゴを考え出すところまで行かない。「どうしても、何としてでも上がりたい。自分の唯一の目的は2階に上がることだ」というくらいの熱意のある人間が、ハシゴを考えつくのである。
松下幸之助が成功した理由は、決して一つに帰することができるものではない。しかし、もしあえて一つだけ挙げよと言われたら、江口氏は「熱意」であると断言できるという。松下幸之助の振る舞いは、いつも熱意というものを頂点として、それを「素直な心」と「誠実さ」が下支えしていたそうだ。これは、「成功へのトライアングル」に他ならないと私は思う。成功へ至るプロセスを一つのシステムであるとしたら、そのシステムを作動させるものが「成功へのトライアングル」であり、中でも「熱意」はエンジンを動かす火力発電機なのだ。