平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #013

「気のマネジメント」〜気功で宇宙エネルギーを取り入れる

 

私の会社では毎日の朝礼において、全員で気功を行っている。何度も新聞やテレビで紹介されたこともあり、当社について「気功の会社」とか「気の経営」と表現する人も多い。
「気」とは何か。まず、宇宙と人間との関わりから考えてみよう。人間、大宇宙すなわち自然の中に生命を与えられた小宇宙である。東洋医学では自然と人間との関係を示すのに五行説を用いる。一年の春夏秋冬を四季と呼ぶが、夏と秋のあいだに土用が入って、季節は五季。人間の身体には肝、心、脾、肺、腎があって、これを五臓と呼ぶ。また、目、舌、口、鼻、耳から感じる感覚を五感と呼び、味についても五味という表現があり、自然と人間との関わりで「5」が重要なキー・ナンバーになっている。
さらに、1年は12ヵ月、人間の体内に走っている経路は12脈、1年は365日、ツボと呼ばれる体内の経穴は365カ所、大動脈は12脈、静脈は365脈、大きな関節は12、小関節は365といったふうに、宇宙と人間はミステリアスなまでに対応しているのである。
その宇宙には気という生命エネルギーが満ちている。人間や動植物は、宇宙から気のエネルギーを与えられて生まれ、また宇宙の気のエネルギーを吸収して生きているのだ。東洋医学では、人間は天の気(空気)と地の気(食物)を取り入れて、体内の気と調和して生存しているという。科学的に見れば、気は一つの波動なのである。したがって気が乱れると病気になってしまう。
荘子は「気が集まればそれが生命である。気が拡散すればすなわち死である」と言った。人間というものは天の気、地の気が集まってできた存在であり、その気がなくなれば死ぬというのである。東洋医学というより東洋思想の根本的な考えは「気」を中心に置いている。東洋思想は、人間の誕生についてもこう考える。宇宙は混沌としたカオスの状態であり、その中から陰と陽の気が合体して一つになり、人間の生命が宇宙に誕生した。よって、人間の生命は気の統合によって生まれ、気によって生かされている。
人間の身体とは、気の流れそのものに他ならない。ちょうどバッテリーのようなもので、放電ばかりしていると、電気がなくなってしまう。長くもたせたいなら、ときどき充電しなければならない。人間も同じで、気の充電をしなければ気力もなくなり、やる気も起こらなくなって、ついには病気になって死んでしまう。そして、気を充電する身体技術のことを気功と呼ぶのである。気功で大事なのは、朝起きて自然のフレッシュな気を深呼吸することである。朝の5時から5時半という時間帯は植物も動物も目覚め、自然の気を取り入れている。人間も体内に朝の大気を丹田呼吸という下半身呼吸によって取り入れ、気を養うことを心がけるべきである。
また、朝、太陽の光を浴びることも大切だ。さらには睡眠や食事も気の充電法として大事である。人間にとって睡眠は欠かすことのできないものであるとともに、自然のリズムに従った生物時計を回復する必要がある。人間は眠ることによって、日中放出した気を充電する。また、食物は地の気である。「医食同源」という言葉があるが、食とは医であり、薬なのだ。自然の摂理に従って旬のものを食べ、味に気づき、過食せず、規則正しく食を取ることが大事なのである。
当社には、これらの考えをふまえ、独自に開発した「産霊気功」というものがある。四半世紀前に中国の大連において初めて気功を知った当社会長が、自ら開発して、改良を重ねたものである。現在でも当グループの各職場で行われている朝の気功として受け継がれている。当社は冠婚葬祭やホテルというホスピタリティ・サービスを事業とするが、これらの仕事に携わる者にとって、最も必要とされるのがプラスの気である。なぜなら、自分自身が充電した気をお客様に対して放電しなければならないからだ。サンレーグループの社員自らが気を充実させ、元気、陽気、楽しい雰囲気、厳かな雰囲気といったプラスの気をお客様に与えること、それが産霊気功の目的なのである。
サンレー創業以来、「気づき、気配り、気働きこそホスピタリティそのもの」を会長は信念としてきた。その意味で、サービスは「気」に通じ、サービス業とは「気業」であるとも言えるだろう。さらには、サービス業に限らず、企業そのものが気業であるとも考えられる。企業とは、経営者の持っている気が社員に乗り移る一個の生命体である、と私は思う。経営者が強気で陽気なら、強気で陽気な会社となり、その逆なら、弱気で陰気な会社となるのである。当社は1988年に「気業宣言」を導入し、ことあるごとに「気」の重要性を社員に説いてきた。産霊気功を朝礼に取り入れたのもそれ以来である。
中村天風は「あらゆる力というものは、それが何の種類であると問わず、すべて気というものから生まれる」と語った。積極的に力強く人生を生き抜くためには宇宙エネルギーを取り入れることが欠かせないという天風の教えの源流には、インドのヨガがある。ヨガには、プラナヤマ(呼吸法)によって宇宙にあまねく存在しているプラーナ(宇宙エネルギー)を呼吸していくという考えだが、このプラーナは「活力」とも「気」とも呼ばれる。プラーナにしろ活力にしろ気にしろ、呼び方はさまざまだが、それらを取り入れ、活力のある会社にすることが何よりも大切である。