平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #041

「恩のマネジメント」〜誰のお蔭であるかを常に自覚する

 

恩とは何だろうか。この文字が最もよくその意味を表わしている。すなわち心の上の因という字は、口の中に大と書いてある。檻の中に人を入れると囚人になるが、この場合は人間がこのように大きくなって存在できるのは、必ず何かのお蔭によるものであるということを表わしているのだ。したがって、それは誰のお蔭であるかということを考え、これを自覚することが恩を知るというものだ、と安岡正篤は述べている。
私は大学を卒業後、広告代理店に勤務し、その後独立してプランナーを経験してから、現在の冠婚葬祭会社を経営するに至った。常に人的ネットワークが最大の資産となる職種に身を置いてきたので、私にとって恩人というと、多くの人を紹介してくれた方々の顔が思い浮かぶ。
まずは広告代理店時代の社長であり、私の媒酌人でもある前野徹氏(2007年2月逝去)。とにかく政財界の大物はすべて前野氏から紹介していただいた。次にプランナー時代には、浜野安宏氏や北山孝雄氏に多くの建築家などのクリエイターを紹介していただき、対談を通して知り合った宗教哲学者の鎌田東二氏には宗教家や学者の方々を紹介していただいた。東京から北九州に居を移してからは知人も少なく心細い思いもしたが、北九州を代表する企業である(株)ゼンリンの取締役で、現在は(株)ゼンリンプリンテックスの会長を務められている大迫益男氏のおかげで随分たくさんの知り合いを得ることができた。本当に有難かった。
これらの方々には深く感謝し、年賀状や暑中見舞いはもちろん、盆暮れには何らかの気持ちの品を送らせていただいている。やはり恩は形にして表わさなければならず、それに鈍感な者は、新たな恩を得ることはできない。
そして、恩と言えば何より自分をこの世に迎え入れてくれた親の恩を忘れてはならない。仏教には、親の恩を身近に説いた「父母恩重経」というものがある。当社は冠婚葬祭を業とすることもあり、私は機会あるごとに「父母恩重経」に出てくるエピソードを社員に紹介し、親の恩の有難さを説く。また、当社の人事考課では「親孝行をしているか」というのが重要なチェック項目になっている。課長以上は社長の私が面談の上、両親に対してどういう恩返しをしているかをヒアリングし、また周囲からも情報を収集して、査定に反映させている。親の恩を忘れ、親をないがしろにするような者など、お客様や部下の心がわかるはずもないし、立派な仕事ができるはずがないからである。