●月あかりプロジェクト
サンレーでは、グリーフケア・サポートのための会員制組織のお世話をさせていただいています。
愛する方を亡くされた、遺族の方々のための会です。
「月あかりの会」という名前にしました。
なぜ、「月あかり」なのか。わたしは月を見ていると、亡くなった人々のなつかしい面影が心に浮かんできます。世界中の古代人たちは、死者の魂は月に行くものだと信じました。
規則的に満ち欠けを繰り返す月は、人間の「死と再生」のシンボルだったのです。また、「釈尊」ことブッダは、満月の夜に生まれ、悟りを開き、亡くなったとされています。そのブッダは、「生老病死」を4つの苦悩としました。
わたしは、人間にはもうひとつ大きな苦悩があると思っています。それは、愛する人を亡くすことです。老病死の苦悩は自分自身の問題ですが、愛する者を失うことはそれらに勝る大きな苦しみではないでしょうか。配偶者を亡くした人は、立ち直るのに3年はかかると言われています。幼い子どもを亡くした人は10年かかるとされています。こんな苦しみが、この世に他にあるでしょうか。
一般に「生老病死」のうち、「生」はもはや苦悩ではないと思われています。しかし、ブッダが本当に「生」の苦悩としたかったのは、誕生という「生まれること」ではなくて、愛する人を亡くして「生き残ること」ではなかったかと、わたしは思うのです。
アメリカのグリーフ・カウンセラーであるE・A・グロルマンは、次のように述べています
親を亡くした人は、過去を失う。
配偶者を亡くした人は、現在を失う。
子を亡くした人は、未来を失う。
恋人・友人・知人を亡くした人は、自分の一部を失う。
それぞれ大切なものを失い、悲しみの極限で苦しむ方の心が少しでも軽くなるようお手伝いをすることが、わが社の使命ではないかと思うようになりました。そして、2010年6月21日に「月あかりの会」を発足させました。グリーフケア・サポートをスタートさせることは、じつに20年来の悲願でした。
わが社の葬祭部門では、愛する人を亡くした人に対して何ができるのか、どのような言葉をおかけすればよいのかを全社員が毎日考えています。でも、必要以上に言葉に頼ってはなりません。もちろん、通夜や告別式で、悲しんでおられるお客様に慰めの言葉をかけることは必要なことです。しかし、自分の考えを押し付けたり、相手がそっとしておいてほしいときに強引に言葉をかけるのは慎むべきです。
ただ、黙って側にいてさしあげるだけのことがいいこともある。
共感して、一緒に泣くこともある。微笑むことがいいこともある。
いまだ理想には程遠いですが、これからも、「愛する人を亡くした人へ」のメッセージをお届けする会社にしたいと願っています。
©一条真也
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