平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #022

「認のマネジメント」〜人は自分を認めてくれる者に尽くす

 

谷沢永一氏のベストセラー『人間通』には、組織の要となり世の礎となりうるための必要条件はただ一つと書いてある。それは他人の心がわかることだ。ただそれだけである。もちろん文明の発生を見てよりこのかた数千年、他人の気持ちがわかることは指導者に必須の条件であった。
人間は最終的に何を欲しているか。谷沢氏は、それは世に理解されることであり世に認められることであると断言する。理解され認められれば、その心ゆたかな自覚をテコとして、誰もが勇躍して励む。それによって社会の活力が増進し、誰もがその恵みにあずかる。この場合、世間とは具体的には自分に指示を与える人であり、働きを共にする同僚である。この人たちから黙殺または軽侮されるのは死ぬより辛い。逆に自分が周囲から認められているという手応えを得たときの喜びは何物にも替え難い。他人の気持ちを的確に理解できる人を人間通というのだ。
『戦国策』には、「士は己を知る者の為めに死し、女は己を説(よろこ)ぶ者の為めに容(かたち)づくる」とある。男は自分の価値を認めてくれる者のためには命を投げ出し、女は自分を愛してくれる人のために容色をととのえる、といった意味である。
アメリカの哲学者ジョン・デューイは、「人間の持つ最も根強い衝動は、重要人物たらんとする欲求である」と述べている。また、リンカーンの書簡の冒頭には「人は誰しもお世辞を好む」と書かれているし、心理学者のウィリアム・ジェイムズは、「人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」と言った。
人を認めるための社会装置として勲章や褒章といったものがある。よく「勲章など俗物的だ」などと軽侮する者が文化人などにいる。
しかし、せっかく社会が認めるものを否定するのは、素直さのない、ひねくれ者である。
あの何よりも権威から縁遠かった本田宗一郎でさえ、勲一等瑞宝章の叙勲が内定したとき、「嬉しいよ。生きているうちに勲章を貰えるのが一番いい。死んでからじゃ意味はねえよ。それに勲一等を貰った技術屋というのは少ないんですよ。その意味でも認めていただいたのは嬉しいよ」と語った。「認」は「誇り」と一体なのである。
個人のみならず企業も認められる。当社が業界で初めてISO9001を認証取得したときは社員一同、大喜びだった。やはり、認められることは嬉しいものだと痛感した。