平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #058

「役のマネジメント」~役割を果たして、社会の役に立つ

 

社会の役に立つことが何よりも大事である。私は、単なるボランティア精神ではなく、社会や人々の役に立つことをすればビジネスでも必ず成功できると確信している。
いくらユニークな商品を開発しても、それを使って喜ぶ人がいなければ社会的な価値は生まれない。たとえ日常的にありふれたものでも、それを必要とする人がいれば、そこに大きな需要が生まれる。だから、多くの人々が待ち望んでいることを目標にする方が成功しやすいのは当然の話なのである。
例えば宅急便が登場する以前は、今日出した荷物が明日届くとは誰も考えなかった。それが一日で届くようになると、生活の利便性は飛躍的に高まり、ビジネスのスピードも一気に上がった。コンビニエンスストアも、私たちのライフスタイルを大きく変えた。夜遅くまで簡単に生活必需品が手に入ることによって、多くの人々が助かっている。これらの事業は今や社会的なインフラになっている。いかに潜在的な需要が大きかったことかに驚かされるが、それだけ人の役に立つビジネスであったから成功したのである。
このように会社とは社会の役に立つために存在しているとさえ言えるが、その会社はさまざまな役割を果たす部門および社員から成り立っている。日本電産社長の永守重信氏は「会社とは終わりのないドラマ」だと言う。最初はまったくの白紙状態から、スタッフを集めてどんなドラマをつくるのかというイメージを描き、シナリオをつくってキャストを選んでいく。演劇やテレビのドラマなら本番が終わればそれですべてが終了するが、会社の場合はエンドレスで、毎日がリハーサルと本番の繰り返しである。
各部門や社員一人ひとりには、ドラマと同じように役が与えられる。その役を見事に演じ切った人は喜びや満足感も大きくなるが、全員の心が一体化すれば、それよりもはるかに大きい感動がある。しかし、なかに一人でも「どうせ、つくりものだから」と手を抜いたり、照れながら演技する人間がいると、すべてはぶち壊しになってしまうのである。
では、ドラマの照明や音響に相当する会社における部門とは、いったい何か。永守氏いわく、利益を生み出すのは製造部門、会社の将来をつくり出すのは技術開発部門、会社を成長させるのは営業部門、よい会社に導くのは間接支援部門、会社を強くするのは経営者。
なるほど、非常に説得力がある。ならば、経営者とは誰よりも名演技のできる役者とならなければならない。