平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #040

「伝のマネジメント」〜メッセージをいかにして伝えるか

 

歴史上の人物を見ると、宣伝機関を持っていた者が人気者になることがわかる。日本史においては、源義経は『義経記』を、楠木正成は『太平記』を、織田信長は『信長公記』を、そして豊臣秀吉は『太閤記』を持つことによって、後世の人々の心をつかんだ。
書物の力というものは偉大だが、考えてみると、孔子、ソクラテス、ブッダ、イエスのいわゆる世界の四大聖人は誰一人として本を書いていないことに気づく。『論語』や『仏典』や『新約聖書』はいずれも彼らの弟子たちがまとめた発言集だし、ソクラテスの言葉もプラトンによって未来に残されたのである。
メッセージを広く、長く伝えるという点において、いかに後継者の存在が大きいかがよくわかる。
現代のリーダー、特に企業の経営者の自叙伝やメッセージ集のようなものが書店にたくさん並んでいるが、一読してプロのライターが代筆したとすぐわかるものが多い。いやしくも志を持って業を立てているからには、たとえ稚拙であっても自らペンをとって想いを綴ってほしいと思う。
私は著書の執筆の他、雑誌や新聞などの連載を数本抱えているが、必ず自分で全部書く。そして、少しでも当社のメッセージを世の方々に伝えたいと思っている。また社員に対しても伝えたいことが山とあるので、毎月の社内報で社員へのメッセージを書いている。
もちろん、書くことだけがメッセージの伝達方法ではない。会議や朝礼や全社集会など、経営者はとにかく語ることが仕事である。
松下幸之助は、次の三点が重要だと言った。すなわち、燃える思いで訴える、繰り返し訴える、なぜ訴えるのかを説明する。この三つの繰り返しをしなければ、リーダーの真意は社員には伝わらないという。なかなか自分の考えが社員に伝わらないと思うなら、自分が十分な努力をしているかどうか、よく考えてみるべきだろう。
かのアレクサンダー大王は、ロック・スターのごとく群集の感情をどう抑え、どう解き放てばいいかを熟知していたという。彼は壮大なビジョンを人々に与えるのに長けていただけでなく、そのビジョンを達成することが臣民にとって何を意味するのか、わかりやすく説明するのが得意だった。たとえ未来の戦利品であっても、いつ届くとも知れぬステーキの、さしあたって肉が焼ける音だけでも人々に与える必要があることに気づいていたのである。その結果、彼は世界帝国の王となった。