平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #045

「想のマネジメント」~映像化によって現実のものとなる

 

想像力は創造力である。人間の「想い」は、これまで、さまざまな形で物理化してきた。
あなたの周辺を見まわしてみていただきたい。あなたの目にはいろんな物が見えるだろう。机、蛍光灯、パソコン、テレビ、冷蔵庫などなど。それらの物は、すべて誰かの想像力がもとになって一つの物に作り上げられたのである。すなわち、その根底をなしている創作者の着想や思考をあなたは眺めているわけだ。家具をこしらえ、窓にガラスをはめ、カーテンを作ったそもそもの初めは、人間の想像力からであった。
自動車も超高層建築も宇宙ロケットも、その他この世のすべての人工物は、人間の想像力から生まれたものである。アメリカの思想家R・W・エマソンは「われわれの行動の根源は想い、つまり精神である」と言った。
ある意味で、人間の心の中に絶えず描かれている思いや考えから組み立てられている「想像」というものは、人類進歩の源泉だと言える。そして「想像」はやがて「理想」というものを心の中に形造るのである。
もし人間に想像する能力がなく、漫然とただ生きているだけだとしたら、科学も哲学も芸術も宗教も、いや、あらゆる一切の人類の偉大な営みは生まれず、ましてや発展などしなかった。だから、想像力は理想を創る原動力であり、その重要性は人生の上で途方もなく大きいことがわかる。
人は誰でも想像する。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』には「恋をする人、詩を思う人たちの胸の中はあの噴火山の煙のように、さまざまな想像で一杯である」と書いてある。
また、ゲーテは「想像の分量が豊富なときに書いたものは、期せずして、人の心を動かす力がある。そして、そういうものを、世間の人は名篇とか傑作とか言う。だから文豪とは、想像力を他人よりも豊富に持つ人のことである」と言っている。
文豪や発明家などは想像力の富豪である。では、富豪でない一般人が、その想像を現実化するにはどうすべきか。中村天風は「想像力を応用して、心に絶えず念願することを映像化して描くことによって、信念というものが確固なものになるんです」と語った。
心の中の映像化によって、想像から念願へ、そして信念となり、現実となる。いわゆるアメリカ産の「思考は現実化する」式の成功哲学と同様である。東に中村天風、西にナポレオン・ヒルあり!同じ人間であるから、心の法則が東西同じなのは当然と言えよう。
企業における新商品や新サービスの開発、イノベーションも、その成功の根源は想像力にある。ヒト・モノ・カネに先立つ本当の資本とは、人間の想像力なのでる。