平成心学塾 経営篇 人は、かならず「心」で動く #098

「速のマネジメント」~迅速な対応が勝敗を決する

 

ビル・ゲイツには『思考スピードの経営』という著書があるが、彼のスピード思想は日本にも輸入され、多くのチルドレンを生んだ。いわゆるネット企業の経営者たちである。
最近の日本経済を振り返ってみると、彼らの活躍ばかりが目立つ気がする。2004年、プロ野球の再編を強力に押し進めたのも彼らだった。ライブドアが近鉄買収に名乗りを挙げたことがきっかけになり、巨人の前オーナーらが画策していた「1リーグ制」は潰れ、東北に楽天という新球団が誕生し、九州ではダイエーに替わってソフトバンクが球団経営に乗り出した。
事の是非や好き・嫌いは横に置いておく。私が何より驚いたのは、これらネット企業の行動の速さであった。得に、ソフトバンクが福岡ホークスを買収した素早さは、あれよあれよという感じだった。まさに、ハヤテのように現われて、獲物をくわえ、ハヤテのように去ってゆくスピード感であった。
その後、ライブドアはニッポン放送買収に乗り出して大騒ぎとなり、その仲裁に入ったのも、やはりネット企業のソフトバンク・インベストメント(SBI)だった。
ネット産業で成功した経営者の多くは、上場企業の大株主かつ経営者である。ソフトバンクの孫正義社長、楽天の三木谷浩史社長、ライブドアの堀江貴文社長などが、あれだけ大胆な決定を次から次へと繰り出せるのは、自社の大株主だからだ。プロバイダー会社ゼロの社長だった西久保慎一氏は、倒産寸前であったスカイマークエアラインズに出資を求められたとき、わずか5分で決断し、自己資金30億円を投じて社長に就任、同社の建て直しに成功した。まるで信長の「桶狭間の戦い」や秀吉の「中国大返し」を連想させるスピード決断だが、この機動性が戦時の経営には重要である。
当社の経営理念の一つには「スピード・トゥー・マーケット~市場への迅速な対応」があり、さまざまな方策を試みている。かつて1972年に沖縄が本土復帰したとき、すぐさま翌年の73年に参入し、互助会を設立した。その結果、あの創価学会でさえ会員普及に苦労した独自の信仰と風俗を持つ「守礼の邦」に互助会会員を増やし、冠婚葬祭で30年以上もシェアトップを続けている。これも創業者である当時の社長が即断即決したおかげだが、沖縄というスローライフの聖地に当社はスピードで挑んだわけである。