マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2024.02

能登半島地震発生 グリーフケアの時代が本格始動!

●能登半島地震の発生
 今年は、干支の甲辰(きのえたつ)と九星の三碧木星(さんぺきもくせい)が重なる年だそうですが、特に元旦は「最強開運日」と呼ばれていました。
 日本の暦に古くからある吉日のひとつであり「一粒の籾(もみ)が万倍にも実る稲穂になる」という「一粒万倍日」、四季ごとの吉日で「天がすべての罪を許す」という「天赦日」、「天からの恩恵を受けられる」という「天恩日」が重なる開運日だからです。それぞれに良い意味を持つ吉日が複数重なることから、「最強開運日」だとして複数の占いサイトなどが伝えていました。
 しかし、その「最強開運日」の夕方に、最大震度七の能登半島地震が発生しました。この地震による死者は241人となりました。(1月31日現在)

●新年祝意会を中止に
 元旦から悪夢のような出来事が起こったおかげで、日本人の正月ムードは吹き飛びました。皇居では新年の一般参賀が中止になりました。箱根駅伝は行われましたが、多くのイベントも延期・中止になっています。テレビでは多くの娯楽番組・お笑い番組が放送延期を発表しました。まさに正月としては前代未聞の異例なことであり、2011年3月11日に発生した東日本大震災以来の非常事態を痛感します。コロナ終息で一気に明るくなった日本列島が新年早々に震撼しました。サンレーグループでは各地での社内行事を予定していましたが、式典のみを行い、祝賀会は行いませんでした。コロナ明けの5年ぶりの祝賀会ということで楽しみにしていた方も多かったようですが、仕方ありません。

●生まれ育った実家が全壊
 このたびの能登半島地震では、金沢紫雲閣の大谷総支配人の実家が全壊してしまいました。彼が元旦に能登半島の志賀町の実家に帰省していた際に地震が発生したのです。彼には高齢のご両親がおられ、近所の方々も高齢であったため、震災直後から自宅前に臨時の避難所を設置したりしていました。その後、ご両親と一緒に現地の避難所に入りました。自力でテレビを設営したり、自衛隊員と一緒に簡易トイレや簡易風呂を設営したりと大活躍の様子をLINEで報せてくれました。
 そんな大谷家は、今年の1月10日が大谷支配人のお祖母さまの一周忌でした。被災した大谷家はすぐに菩提寺と料理店に一周忌のキャンセルを伝えたそうです。

●下駄箱で一周忌をあげる
 それでも一周忌の当日が来ると、大谷総支配人は「何としてでも祖母のお参りはしなければならない」という思いにかられました。そして、自宅の中でも被害の少なかった玄関の下駄箱に祭壇を設え、お参り出来るようにしたそうです。そこで住職にお経をあげて頂いたといいます。彼は、LINEで「後で考えると『供養』とはまさに人間の本能ではないかと思います。それと同時に、珠洲市や輪島市の惨状を目にすると、これから法要を予定していたけど出来ない方がたくさんいるのだと思いました。それを考えると、被災地には『お祈りする場所』が必要なのかもしれません。これは私を含め、今後グリーフケア士が災害支援を行う上での、大きなヒントとなるような気がしました」とのメッセージを送ってくれました。

●お祈りする場所
 大谷総支配人からのLINEメッセージには、下駄箱の上に作られた祭壇の写真が添えられていました。それは、まさに「お祈りする場所」でした。彼が言うように、わたしも「供養」は人間の本能だと思います。拙著『供養には意味がある』(産経新聞出版)にも書きましたが、わたしは、供養とはあの世とこの世に橋をかける、死者と生者のコミュニケーションであると考えています。そして、供養においては、まず死者に、現状を理解させることが必要です。僧侶などの宗教者が「あなたは亡くなりましたよ」と死者に伝え、遺族をはじめとした生者が「わたしは元気ですから、心配しないで下さい。あなたのことは忘れませんよ」と死者に伝えることが供養の本質だと思います。

●大切なのは祈る「こころ」である!
 供養には、故人のあの世での幸福を願う追善と、子孫である自分たちを守ってくれていることに対する感謝の気持ちが込められています。「おかげさま」という言葉で示される日本人の感謝の感情の中には、自分という人間を自分であらしめてくれた直接的かつ間接的な原因のすべてが含まれています。そして、その中でも特に強く意識しているのが、自分という人間がこの世に生まれる原因となった「ご先祖さま」なのです。供養で大切なのは何よりも「こころ」です。その「こころ」を表す「かたち」は華美なものである必要はありません。いま・ここで可能な「かたち」でいいのです。

●グリーフケアの時代へ
 下駄箱に設えられた祭壇からは、亡くなられたお祖母さまへの大谷総支配人の気持ちが伝わってきます。今回のような災害でご冥福を祈る意味でも、生かされたことに感謝する意味でも「お祈りする場所」は心の拠り所となると思います。能登半島の全壊した自宅に素晴らしい祭壇を設えた大谷総支配人はさすが上級グリーフケア士だと思いました。彼が避難所で多くの方々の「こころ」を守ったこと、そして極限の状況の中でもお祖母さまの一周忌で素晴らしい供養をすることができたこと、これはサンレーグループのみなさんにとっても誇りではないかと思います。最後に、被災者の方々が早く日常生活に復帰できることを心から願っています。

 ひとびとの暮らしを壊す
  おそろしき地震起これど供養は死なず  庸軒