死生観のアップデートから 新時代の葬儀と供養は生まれる
●ロマンティック・デス
このたび、2冊の新刊を上梓しました。ペンネームの一条真也ではなく、本名の佐久間庸和として書きました。『ロマンティック・デス 死をおそれない』、『リメンバー・フェス 死者を忘れない』の2冊です。
まず、33年前にコンセプトとして提案した「ロマンティック・デス」について。わたしは、「死を美化したい」、さらにいえば「死は美しくなければならない」と思いました。なぜなら、われわれは死を未来として生きている存在だからです。未来は常に美しく、幸福でなければなりません。もし未来としての死が不幸な出来事だとしたら、死ぬための存在であるわれわれの人生そのものも、不幸だということになってしまいます。わたしは不幸な人生など送りたくありません。幸福な人生を送りたいと思います。
わたしたちは、この世に生を受けた瞬間から「死」に向かって一瞬も休まずに突き進んでいます。だからこそ、残された時間を幸福に生き、幸福に死にたい。これはわたしだけではなく誰もが願うことでしょう。言うまでもなく、わたしたち全員が「死」のキャリアです。ならば、あらゆる人々が「死のロマン主義」を必要としているのではないでしょうか。
●死は不幸な出来事ではない
死は決して不幸な出来事ではありません。なぜなら、誰もが必ず到達する「生の終着駅」だからです。死が不可避なら、死を避ける、あるいは死を考えないのではなく、素晴らしい終着駅にするべきでしょう。
わたしは「終活(終末活動)」を「修活(修生活動)」と言い換えています。人生を修めるという意味です。でも、相変わらず「死」はタブー視されています。人々は、死を恐れています。今こそ、人生の終着駅である「死」を考え、死までの「生」を充実させるべきではないでしょうか。
わたしは「死」を考えることは人生をゆたかにする、心をゆたかにする行為であると信じています。死の不安や恐怖を乗り越えるために、前向きな死生観を現代人はもつべきではないでしょうか。わたしは『ロマンティック・デス』に3つのテーマを与えました。まず第一は「死」です。人間にとって永遠の謎であり、不可知の死をイメージするための手助けになればという思いからです。
第二は「月」としました。死後の世界観を示す試みです。そして、第三は「葬」です。現代社会における「葬」の役割を、変わらないものと、変えていくべきものとの両面でとらえなおす作業となりました。誰もが幸福な死生観をもつことができる「ロマンティック・デス」を目指して、わたしは恐れずに、今再びこのコンセプトを提案します。
●リメンバー・フェス
次に、「リメンバー・フェス」とは何か。それは供養のアップデートです。「盆と正月」という言葉が今でも残っているくらい、「お盆」は過去の日本人にとって楽しい行事でした。一年に一度だけ、亡くなった先祖たちの霊が子孫の家に戻ると考えたからです。
日本人は古来、先祖の霊に守られて初めて幸福な生活を送ることができると考えていました。その先祖に対する感謝の気持ちを「供養」という形で表したものが「お盆」です。一年に一度帰ってくる先祖を迎えるために迎え火を焚き、各家庭の仏壇でおもてなしをしてから、送り火によってあの世に帰っていただくという風習ですね。
同じことは春秋の彼岸についても言えますが、この場合、先祖の霊が戻ってくるというよりも、先祖の霊が眠っていると信じられている墓地に出かけて行き、供花・供物・読経・焼香などによって供養します。
●なぜ、先祖供養するのか?
それでは、なぜこのような形で先祖を供養するのかというと、もともと2つの相反する感情からはじまったと思われます。1つは死者の霊魂に対する畏怖の念であり、もう1つは死者に対する追慕の情。やがて2つの感情が1つにまとまっていきます。
死者の霊魂は死後一定の期間を経過すると、この世におけるケガレが浄化され、「カミ」や「ホトケ」となって子孫を守ってくれる祖霊という存在になります。かくて日本人の歴史の中で、神道の「先祖祭り」は仏教の「お盆」へと継承されました。
サンレーは冠婚葬祭互助会です。毎年、お盆の時期には盛大に「お盆フェア」を開催して、故人を供養することの大切さを訴えています。しかしながら、小さなお葬式、家族葬、直送、0葬といったように葬儀や供養に重きを置かず、ひたすら薄葬化の流れが加速している日本にあって、お盆という年中行事が今後もずっと続いていくかどうかは不安を感じることもあります。
●供養のアップデート
特に、Z世代をはじめとした若い人たちは、お盆をどのように理解しているかもわかりません。お盆をはじめとした年中行事は日本人の「こころの備忘録」であり、そこにはきわめて大切な意味があります。
お盆が古臭い、形式的なものでなぜあるのかわからない。お盆って夏休みじゃないの。お盆なんかなくなってもいいのでは――でも、わたしは先祖を供養してきた日本人の心は失ってはいけないと思っています。
お盆という形が、あるいは名前が現代社会になじまないなら、新しい箱(形)を作ればいいのではないかと思いました。それが「リメンバー・フェス」です。
ディズニー・ピクサーのアニメ映画の名作「リメンバー・ミー」からインスパイアされた「リメンバー・フェス」は「お盆」のイメージをアップデートし、供養の世界を大きく変えるでしょう。ロマンティック・デス&リメンバー・フェスで、死生観のレボリューションを起こしましょう!
弔ひと供養のかたち変われども
亡き人想ふ心変わらず 庸軒