マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2008.01

天下布礼の旗を掲げ  人間関係を大いに良くしよう!

●人間を嫌う社会

 昨年は全国のサンレーグループを三班に分けて実に総勢600名の上海旅行を行いました。今どき、こんな大人数で社員旅行をする会社は全国どこにもないようで、旅行会社の人は「まず、聞いたことがありません」と話していました。どんな大企業でもないそうです。
 いや、大企業ほど、こういった社員旅行はなくなる一方だとか。セクハラをはじめとした人間関係のわずらわしさから、旅行はもちろん忘年会などもどんどん縮小傾向にあるようです。どうも、日本中の会社が「人間嫌い」の方向に向かっているような気がします。
 それには、加速化する一方のIT化の影響も大きいでしょう。みんな一日中、机の上のパソコンにばかり向き合って、人間と向き合わない、そんな会社ばかりになりました。
 いや、会社というより、社会そのものがそうです。例の個人情報保護法の関係で、同窓会や町内会の運営も難しくなっています。ますます人と人が接触する機会が失われてしまう。社会全体が「人間嫌い」になっているのです。
●人間を好きになるに
  しかし、わたしたちは絶対に人間嫌いになってはなりません。なぜなら、わたしたちは人間を相手にするのが仕事だからです。逆に、人生で最大の喜びや悲しみのお世話をさせていただくホスピタリティ・サービスを業とするわたしたちは、誰よりも人間好きにならなくてはなりません。
 人間を好きになることは、一緒に働く職場の仲間を好きになることから始まります。その人を好きになるには、その人と話し、その人を知ることが一番です。それには、海外旅行という最高のシチュエーションで「思い出」を共有することが一番でしょう。
 考えてみれば、夫婦だってお互いをよく知り、お互いをさらに好きになるために新婚旅行に行くではありませんか。
 だから、わたしたちは「人間嫌い」化という世の流れに逆らって、あえて五百名の大旅行を企画し、実行したのです。これは、ハートレス・ソサエティからハートフル・ソサエティに社会の向きを変える試みでもあります。
●「人間関係」がキーワード
 社会というものは、結局、人間の集まりです。そこで「人間関係」というキーワードが出てきます。最近は「人間関係」をテーマにした本が多く出版され、大きな関心を集めているようです。
 人間関係は難しいものです。人間は一人では生きられません。だから、死ぬまで人間関係には悩まされます。特に会社という組織の中にあっては、その悩みは尽きないようです。
 サラリーマンが会社を辞めたくなる理由でいつもトップにくるのは、職場の人間関係です。仕事のつらさ、給料の安さより、人づきあいのほうが大きなウエイトを占めているわけです。人間関係がいかに大切かがわかると思います。
 かの夏目漱石は『草枕』に、「智に働けば角が立つ。情に棹されば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角人の世は住みにくい」という有名な言葉を残していますが、これも人間関係の難しさを語っているわけですね。
 そもそも「人間」という字が、人はひとりでは生きてゆけない存在だということを示しています。作家の五木寛之氏は、人間は「関係」がすべてであり、何よりも必要なのは「より良い新しい関係」であると、近著『人間の関係』で断言しています。
●心のシナプスとは何か
 五木氏は、シナプスというものに注目しました。人間の脳の細胞は日々壊れていき、再生しないまま減っていくそうですが、この脳の神経細胞それぞれの間をつなぐ大事な役割を担っているのがシナプスです。
 人間は歳をとると、脳の細胞が減少して、ボケていくだけではありません。ときにはシナプスが思いがけぬ力を発揮して、細胞間の関係を調整し、連携しあい、なんとか減少した細胞を組織して、やりくりをつける働きをするのです。
 日本人の自殺率上昇が問題になっていますが、自殺にはその地域の人口や、家族数の減少が大きく関わっているようです。過疎化と人口の大都市集中が、自殺に関係があると言われますが、それを止める方法は今のところ見つかりません。
 五木氏は、「そうだとすれば、人間の関係が希薄になっていくにつれて、自殺は増えるにちがいない。そうだとすると、たぶん、いま必要なのは、人間と人間とのあいだをつなぐシナプス、心のシナプスとでもいうべきものではないでしょうか」と述べています。
●そして、「天下布礼」へ
 まさに、わたしたちの冠婚葬祭とは「心のシナプス」ではないでしょうか。わたしたちは「心のシナプス」を社会に提供しているのです。ご存知のように、当社の小ミッションは「冠婚葬祭を通じて良い人間関係づくりのお手伝いをする」です。冠婚葬祭ほど、人間関係を良くするものはありません。
 そして、わたしたちの理想はさらに大ミッションである「人間尊重」へと向かいます。太陽の光が万物に降り注ぐごとく、この世のすべての人々を尊重すること、それが「礼」の究極の精神です。
 だから、わたしは「礼」の精神が誕生した中国の地で「天下布礼」という言葉を持ち出したのです。天下、つまり社会に広く「人間尊重」の思想を広めることがサンレーの使命です。わたしたちは、この世で最も大切な仕事をさせていただいているのです。
 これからも冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをしていきたいものです。そして、少しでも世の中を明るくしていこうではありませんか!
 人間の関係良くし世の中を
    明るくするはわれらのつとめ  庸軒