マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2023.02

他人を思いやれば自分も良くなる コンパッション企業を目指そう!

●振り袖墨汁事件への対応
1月8日、北九州市開かれた「20歳の記念式典」で、振り袖に墨汁のようなものをかけられる事件が発生しました。33歳の男性容疑者が逮捕されましたが、10数件の被害が確認されました。その中には、松柏園ホテルでお世話させて頂いたお客様も含まれていました。当日の全国ニュースに映った衣裳も、わが社の衣裳でした。
当日の夜、お客様のお母様からの連絡で「娘が大変ショックを受けていること」「実家の祖父母へ晴れ姿を見せに行く予定だったこと」を聞いた担当者は、なんとかこの悲しみをケアし、喜びに変えたいと思案。
現場からの相談を受けたわたしは、「コンパッションで行きなさい!」と即答。担当者はお客様への慰めの言葉に加えて、「ぜひとも新しい振袖を着て、ご実家に行きましょう!当ホテルで無償で準備をさせて下さい」と訴えたのです。テレビ各局からの取材を受けたお嬢様は、ホテルスタッフの対応に感謝の言葉を語られました。

●コンパッションで「優しさの上書き」
その後、松柏園ホテルへ複数のテレビ局からの取材が相次ぎました。取材では、わが社が日頃より「コンパッション」をテーマに「お客様に寄り添った対応」を意識していることを川俣副支配人が熱く語ってくれました。そして悲しい事件の中でも「優しさの上書き」ができたことに各局とも時間を大きく割いてご紹介いただきました。残念ながら、人間は晴れの日の振り袖に墨汁をかけるという非道な行為も行います。しかし、人間は困っている人にコンパッションを提供し、そのグリーフをケアすることもできるのです。そう、非道には人道で対抗すべきではありませんか!
松柏園の人道的コンパッション対応はヤフーニュースの記事にもなり、1100件を超える絶賛コメントが寄せられました。また、松柏園の公式サイトへのアクセス数はなんと140倍になったのでした。

●喜びのサイクルを呼び込め
わたしは、社長として、「コンパッション・ホテル」としての対応をした松柏園ホテルのスタッフのみなさんに感動しました。一生に一度の晴れの日を悲しい事件で終わらせることなく、お客様のグリーフを共有し、新たな喜びのサイクルを呼び込んだメンバーを心から誇りに思います。
北九州に関連する著名人たちからも大きな反響がありました。第一交通産業の田中亮一郎社長からは「ニュース見ました!流石です!なんか心がジワーって来ました。一生に一度の思い出が、より鮮明に記憶される思い遣りですね」とのメールを頂戴しました。NPO法人ロシナンテスの川原尚行代表からは「残念な事件ですが、これは大ファインプレーですね!末娘が昨年成人したので親御さんの気持ちが痛いほどわかります。それにしても、サンレーさんは素晴らしいことをされますね」とのLINEを頂戴しました。
この他にも、ハローデイの加治敬通社長、サンキュードラッグの平野健司社長をはじめ、多くの方々から温かいメッセージが届きました。本当に、ありがたいです。

●北九州市をコンパッション都市に!
今年、北九州市が誕生60周年を迎えます。旧五市が合併に最終合意し、その調印式会場に選ばれたのが松柏園ホテルでした。わたし自身も60年前に松柏園で生まれています。北九州市は、全国の政令指定都市の中で最も高齢化が進んでいます。日本が世界一の高齢化率であることを考えると、北九州市は世界一高齢化が進んだ街と言えるでしょう。
人口が100万人を切ったことから、北九州市の衰退が叫ばれています。しかし、わたしはつねづね、「高齢者が多いことは北九州の強み。それを悪いことと思い込んできたことが意気消沈してきた原因」と語っています。
配偶者の死が自殺の要因となるケースも多いため、わが社は、近くで接する遺族の立ち直りを支援するグリーフケアを推進してきました。またNPO法人を設け、地域の独居高齢者らが集う「隣人祭り」を開き、孤独死防止を図ってきました。すべては、コンパッションに基づいた企業活動です。

●コンパッション企業を目指そう!
わが社では、血縁や地縁の希薄化がみられる中、趣味などの新たな縁作りの手伝いにと、囲碁や俳句大会も開催しています。さらには、「ともいき倶楽部」「笑いの会」なども開催。
こうした取り組みはコンパッションの都市作りに通じます。全国で独居高齢者が増えていますが、わたしは、北九州市を高齢者特区にして、高齢者向けのショッピングセンターや娯楽施設、医療も受けやすくすることを提唱しています。孤独死しないような隣人都市を作り、全国から独居高齢者が北九州に集まってくれば人口も増えるでしょう。さらに、困窮者やシングルマザー支援も充実させ、「困ったら北九州に行ってみよう」という街にする。そうすれば、北九州市は世界一のコンパッション都市となるでしょう。それは、そのまま互助共生社会の実現でもあります。
世界的に有名なイギリスの動物学者マッド・リドレーは、「他人を思いやるのは人間の本能である」と述べています。ならば、その本能である「思いやり」「利他」「互助」の精神に基づく経営を行うコンパッション企業は最強です。
これからも、コンパッション企業として、世のため人のために行動しましょう!そうすれば、わたしたちも必ず良くなることをお約束いたします。

人のため ただ人のため行へば
めぐりめぐりて社(やしろ)栄えり  庸軒