お盆をアップデートする リメンバー・フェスで世界平和を!
●互助会業界将来ビジョンの発表
8月22日、ホテルベルクラシック東京で、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)の創立50周年記念行事が行われました。理事会の後、「互助会業界将来ビジョン報告会」を開催。互助会業界の若手経営者たちが苦心して作成した将来ビジョンは多くの示唆に富んでいました。
最後は、「即ち、『将来に向けて業界が目指すべき姿』は『生まれてから亡くなるまでの一人ひとりの暮らしがよりウェルビーイングなものになるように〔健康〕〔交流〕〔助け合い〕を軸として、個々の会員としての関係を深め、会員同士のつながりを広げることで〔心ゆたかな社会=ハートフル・ソサエティ〕を実現していくことにある』といえる。まさに将来ビジョンとして、業界が掲げるべきは『冠婚葬祭産業からウェルビーイング推進産業への昇華』であり、その事業活動を通じて、『感動』や『感謝』、『思いやり』に溢れる社会『ハートフル・ソサエティ』の実現に貢献していくことが求められていると考えている。」として、【一人ひとりにウェルビーイングな暮らしを届ける】とまとめられていました。わたしは、非常に感動しました。
●言葉=心の矢を放つ
互助会業界全体のビジョンに「心ゆたかな社会」「ハートフル・ソサエティ」「ウェルビーイング」が入ったことは画期的です。これは、サンレー思想そのものだからです。ちなみに、わたしには『心ゆたかな社会』『ハートフル・ソサエティ』『ウェルビーイング?』というタイトルの著書もあります。
わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。それを「矢を放つ」と表現しています。新しい言葉(思想)とは1本の矢であり、それが放たれることによって、人々の心に刺さっていきます。そして、世の中は確実に変わり始めます。言葉には力があるのです。「ハートフル」「ロマンティック・デス」「グランドカルチャー」「結婚は最高の平和である」「死は最大の平等である」「有縁社会」「修活」「悲縁」「礼欲」も、最近では「WC」や「CSHW」も、すべてわたしが放った心の矢です。
●「リメンバー・フェス」という矢
今回は、「リメンバー・フェス」という矢を放ちたいと思います。これは「お盆」をアップデートした言葉なのですが、ディズニー&ピクサーのアニメ映画「リメンバー・ミー」(2017年)にインスパイアされたネーミングです。
「リメンバー・ミー」は第90回アカデミー賞において、「長編アニメーション賞」と「主題歌賞」の2冠に輝きました。過去の出来事が原因で、家族ともども音楽を禁止されている少年ミゲル。ある日、先祖が家族に会いにくるという「死者の日」に開催される音楽コンテストに出ることを決めます。伝説的ミュージシャンの霊廟に飾られたギターを手にして出場しますが、それを弾いた瞬間にミゲルは死者の国に迷い込んでしまいます。カラフルな「死者の国」も魅力的でしたし、「死」や「死後」というテーマを極上のエンターテインメントに仕上げた大傑作です。
●死者を忘れない
わたしたちは、死者を忘れてはなりません。今月からクラインクインする映画「君の忘れ方」の原案である拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)でも紹介しましたが、アフリカのある部族では、死者を二通りに分ける風習があるそうです。
人が死んでも、生前について知る人が生きているうちは、死んだことにはなりません。生き残った者が心の中に呼び起こすことができるからです。しかし、記憶する人が死に絶えてしまったとき、死者は本当の死者になってしまいます。誰からも忘れ去られたとき、死者はもう一度死ぬのです。
映画「リメンバー・ミー」の中でも、同じメッセージが訴えられていました。死者の国では死んでもその人のことを忘れない限り、その人は死者の国で生き続けられますが、誰からも忘れられてしまって繋がりを失ってしまうと、その人は本当の意味で存在することができなくなるのです。
●お盆をアップデートする
「死者を忘れないこと」は、死者へのコンパッションのためだけではなく、わたしたち生者のウェルビーイングのためでもあります。もともとお盆に関連した盆踊り、祇園太鼓、花火といったものは死者への「もてなし」でした。でも、生者も楽しむことができます。
お盆は故人を供養することの大切さを再確認する大切な年中行事ですが、小さなお葬式、家族葬、直葬、0葬といったように葬儀や供養に重きを置かずに薄葬化の流れが加速している日本にあって、お盆が今後もずっと続いていくかどうかは不安を感じることもあります。特に、Z世代など若い人々がどのように理解しているかもわかりません。そこで、「お盆」をアップデートする必要があります。
「リメンバー・フェス」は、なつかしい亡き家族と再会できる祝祭ですが、都会に住んでいる人が故郷に帰省して亡き祖父母や両親と会い、久しぶりに実家の家族と語り合う祝祭でもあります。あの世とこの世の誰もが参加できる祭りなのです。
日本には「お盆」、海外には「死者の日」あるいは「ハロウィン」など先祖や亡き人を想い、供養する習慣がありますが、国や人種や宗教や老若男女といった何にもとらわれない共通の言葉として、わたしは「リメンバー・フェス」という言葉を提案します。将来、ニュースなどで「今日は、世界共通のリメンバー・フェスの日です」などと言われる日を夢見ています。
亡き人を忘れぬ祭り残すべし
これより盆はリメンバーフェス 庸軒