ドラッカーの教えを生かし、第2創業期に大いに発展しよう!
●MBAの前での特別講義
先日「齋藤アカデミー」で特別講義をしました。社会起業大学・九州校が主催する、これからのリーダーを育成する私塾です。受講生のほとんどがMBAの取得者です。北九州市立大学の経済学部長などを務められた齋藤貞之先生が立ち上げたユニークな学校です。そこで、わたしはドラッカーのマネジメントについてお話しました。
「マネジメントの父」とも呼ばれたドラッカーこそは、世界最高の経営思想家でした。経営学そのものの創始者でもあります。世界のビジネス界に最も影響力を持つ思想家であり、「マネジメント」という考え方そのものを発明しました。
また、偉大な経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの流れを受け、「イノベーション」の重要性を強調するとともに、マネジメントに関わる「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」などの理念の生みの親で、それらのコンセプトを自ら発展させてきました。
●ドラッカー理論を導入
世界最大の大企業の1つであるGEのCEO(最高経営責任者)に就任したジャック・ウェルチは「選択と集中」を取り入れて大成功、一躍カリスマ経営者となったことはよく知られています。
ウェルチがGEのCEOになって最初に行なったことは、クレアモントのドラッカーを訪問し、経営戦略のアドバイスを受けることでした。ウェルチのみならず、世界にはドラッカーを信奉する経営者が数多く存在します。日本でも、ソニーの故盛田昭夫氏、出井伸之氏、イトーヨーカドーの伊藤雅俊氏、富士ゼロックスの小林陽太郎氏、ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正氏など、多数の経営者がドラッカーに共感し、こうした方々は「ドラッカリアン」と呼ばれています。
わたしも、2001年に社長に就任して以来、ドラッカーの経営理論を導入して会社の経営にあたってきました。
●ドラッカーとの出会い
わたしが社長に就任したとき、まだ38歳の若輩でした。1000人を超える社員を抱え、さまざまな経営的課題を抱えたままの船出に心は不安で一杯でした。何しろ、私の判断ミス1つで、社員およびその家族を含めた数千人の方々が路頭に迷うわけですから、ストレスで眠れない夜もありました。
そんな夜にふと読みはじめたのが、経営のバイブルとされていたドラッカーの著書でした。目から鱗が落ちたような気持ちになり、それから1ヶ月以内に30冊におよぶ彼の著書は全部読破しました。
そして、それによって当社を良くするヒントが毎日のように思い浮かびました。わたしはそれを片っ端から実行に移し、おかげさまで業績は見違えるように良くなりました。本当に、ドラッカー先生にはいくら感謝しても、し足りません。
●人類史上最高の「経営通」
ドラッカーの本は、経営についての教え以前に、人間としての基本をビシッと教えてくれます、それは、『論語』にも通じるものです。そう、孔子とドラッカーはよく似ています。両者の間には2000年を超える時間が流れていますが、孔子は人類史上最大の「人間通」、ドラッカーは最高の「経営通」だと思っています。
孔子は古代のドラッカーであり、ドラッカーは現代の孔子であると言えるかもしれません。理想の政治を説いた孔子、理想の経営を説いたドラッカー・・・・・・ともに、社会における人間の幸福を追求したのです。
わたしが何より、「すごいぞ!ドラッカー」と思うのは、あらゆる経済学者や経営学者たちが従業員を「コスト」としてしか見なかったのに、ドラッカーだけは「資産」として初めて見たことです。これはとんでもない大発見というか発想の転換です。
結局、ドラッカーのすごさは、世界に「意味」という魔法を与えて、人類社会を良い方向に導く考え方を示したことです。
●新しいマネジメントの地平を
かつて苦境にあえいでいたわが社は、「選択と集中」「知識化」「イノベーション」をはじめとする数々のドラッカー理論導入により、経営内容が格段に改善しました。
製造業を中心としたマネジメントが主流の中で、サービス業それも冠婚葬祭業という超ソフトな産業においてドラッカー理論がこれほど的確に応用できたのは奇跡に近いと自分でも思います。しかし、その一方で、「人が主役」というドラッカー思想と「人間尊重」という当社のミッションが根底で合い通じていたため当然だという思いもあります。
ドラッカーの唱える「知識化」を「すべての産業は知識化しうる」と私流に解釈し、当社ではことあるごとに「知識」の大切さを社員に訴え続けてきました。そのおかげで、ISO9001も業界で最初に取得しましたし、一級葬祭ディレクター試験の合格者数も日本一となることができました。
典型的な労働集約型産業であると考えられていた冠婚葬祭業を知識集約型産業へと発展させ、さらには「思いやり」「感謝」「感動」「癒し」といったポジティブな心の働きが集まった精神集約型産業へと高めたいです。そして、超高齢化社会において多くの方々が「老いる覚悟」と「死ぬ覚悟」を持ち、心ゆたかに生きていただくお手伝いがしたい。
それは、ドラッカーの考えた「人の幸せ」とも直結し、彼の視線とそのベクトルは同じであると確信します。第2創業期を迎え、さらなる新しいマネジメントの地平を開きたいと思います。
新たなる創業期の始まりに
ドラの音鳴らし前に進まん 庸軒