苦情は最高の贈り物 されど、クレーマーには要注意!
●クレーマーとは何か
いま、日本で一番権力を持っているのは誰かというと、明らかに消費者でしょう。その消費者の中でも無視できないのが「苦情を言う人」、すなわち「クレーマー」の存在です。
「クレーマー」とは、企業・医院・学校・行政その他において、必要でない顧客を指すようです。もちろん、どんな顧客でも、意見の中には提案としてありがたくいただくものや、企業や行政などの戒めとなるものがあります。
私も毎日のようにお客様アンケートを読んでいますが、グッドコメントにせよバッドコメントにせよ、謙虚にありがたく受け止めています。
しかし、まさに快楽として「困らせよう」としている人、大きく常識を逸脱し、度を超えて意見をする人、詐欺行為に近い行動で金品を求める人なども存在します。こういった人々がクレーマーなのです。彼らには、徹底した対抗が必要になります。
●クレーマーの共通項
ベストセラーになった『となりのクレーマー』の著者である苦情・クレーム対応アドバイザーの関根眞一氏は、クレーマーの共通項を次のようにまとめています。 通常では苦情と言えないようなものを、大げさに取り上げる。
苦情の連続技を持つ(一事象の流れの中で、複数の苦情を訴える)。 過去の苦情被害を持ち出し、自分を優位に置く。 相手とのやりとりをいわば「苦情ゲーム」化し、愉(たの)しむところがある。
恐喝には至らないが、対応が困るように脅しをかけてくる。 訴えが一か所でなく、関連先全体に苦情として申し入れをしてくる 現場で話をすれば解決できるようなことを、本部や関連各所に申し入れる。
こちらの社長名を出したり、知人の存在を誇示して圧力を掛ける。
一度は気持ちよく解決しても、解決していない。次に来ない保証はまったくない。
外部の人も多くがクレーマーと認めている 家族も知っている。 相手が困るのを面白がる「愉快犯型」と、結果として金品を求める「要求型」がある。
●クレーマーは師である
「ハインリッヒの法則」というものをご存じですか。失敗を法則化したものですが、それによれば、1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故があり、さらにその後ろにはヒヤリとした事例が300件潜んでいるといいます。そのヒヤリを見て、見ないふりをすると大きなツケになるのです。
また、苦情に関するデータには次のようなものがあります。 不満を持った顧客のうち、苦情を言う顧客は27人に1人である。 不満を持った顧客は平均8人から10人の人に不満を言いふらす 不満を持った顧客の5人に1人は、20人の人に言いふらす。 不満が解決された顧客は、不満がなかった顧客より再購入の比率が高い。よくも悪くも顧客のクチコミ効果は、企業の広告の二倍以上である。
このように、苦情やクレームといったものの存在意義はきわめて大きく、苦情を言う人とは、「ハインリッヒの法則」でいう重大事故に至らないために注意を与えてくれるという側面があります。
だから、クレーマーをすべて悪者視せず、会社の健全な経営を支えてくれるアドバイザー、つまり「師」ととらえることが必要です。
●苦情は、あなたへの贈り物
苦情は、あなたへの贈り物のようなものです。贈り物だから対応に気後れしなくても良い、と考えれば気が楽になります。贈り物をもらったときに「ありがとうございます!」と言うのと同じように感謝の態度が身につけばよいのです。
そうすれば、苦情を言われても、価値あるものとしてそれを心から歓迎して受け容れることができます。
具体的には、苦情には次のように8段階で対応することが好ましいと言えます。 「ありがとう」とお礼を言う 苦情に感謝した理由を説明する。 ミスを謝罪する。 迅速な問題対処を約束する。 必要な情報を依頼する ミスを「迅速に」是正する。 顧客満足度をチェックする。 今後のミスを予防する
●お客様をクビにするとき
ただ、そうは言っても、サービス業において「テロリスト客」とも呼べる危険な顧客が存在することも事実です。
いま、サービス・マネジメントの世界では次の3つの場合は、顧客をクビにすべきであるという考え方が定説となっています。すなわち、1、経済的損失。2、従業員に対する心理的な損失が大きすぎるとき。3、企業が大切にしている価値観が侵害されるとき、です。
最初の経済的損失というのは難しい部分がありますが、2番目と3番目は大賛成です。従業員のプライドを打ち砕き、意欲をそぐような悪質なお客は、もっとサービスしがいのあるお客様へのエネルギーを奪ってしまう。
また、暴力やセクハラや暴言などの反道徳的行為がある場合はもちろん、「人間尊重」という当社の大ミッションを冒涜(ぼうとく)する人、例えば差別主義者などの場合は、ぜひお引取り願って下さい。
お客様をクビにするにはあらゆる手段を尽くした後にすることは当然です。でも、この世には金よりも大切な「誇り」というものがあることを忘れないで下さい。当社は、みなさんの人間としての尊厳を絶対に守ることを誓います。
当社のミッションである「人間尊重」はみなさんにも向けられているのです。
苦情言ふ人こそ師なり ありがたや
クレーム文は ラブレターかな 庸軒