マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2012.05

新しい仲間を迎え、 ”和のこえ”で福を呼び込もう

大きな出来事

 4月19日、サンレーグループにとって大きな出来事がありました。創業百年を超える名門企業・北九積善社の全施設を取得したのです。いずれも伝統ある荘厳な、また最新のモダンな豪華施設ばかりです。
 一度に六つもの会館が紫雲閣グループに加わり、これまでトップシェアを誇っていたサンレー北九州のシェアはさらに圧倒的な数字を示すことでしょう。当然ながら、業界でも大きな話題を呼んでいます。
 わたしは、もともと北九積善社という会社を素晴らしい会社であると思っていました。今年2月に逝去された故・越智会長は尊敬すべき業界の大先輩でしたし、越智英晶社長も人格者でした。
 施設だけではありません。北九積善社からは16名の社員がサンレーに入社します。一級葬祭ディレクターも多く、紫雲閣の人材の層がいっそう厚くなりました。また、生花業の(株)オラシオンが事業譲渡され、こちらも4名が入社します。
「和」の精神で融和しよう
 4月20日には松柏園ホテルで入社式が行われ、そこでわたしも社長訓示を行いました。
 わたしは、まず新しい仲間を迎え、「大変嬉しく思う」と言いました。それから、日本文化のキーワードである「和」について話しました。陽明学者の安岡正篤によれば、日本の歴史を見ると、日本には断層がないことがわかるといいます。文化的にも非常に渾然として融和しているのです。
 征服・被征服の関係においてもそうです。諸外国の歴史を見ると、征服者と被征服者との間には越えることのできない壁、断層がいまだにあります。しかし日本には、文化と文化の断層というものがありません。早い話が、天孫民族と出雲民族とを見てみると、もう非常に早くから融和してしまっているのです。
日本は大和の国
 三輪の大神神社は大国主命、それから少彦名神を祀っていますが、少彦名神は出雲族の参謀総長ですから、本当なら惨殺されているはずです。それが完全に調和して、日本民族の酒の神様、救いの神様になっています。
 その他にも『古事記』や『日本書紀』を読むと、日本の古代史というのは和の歴史そのものであり、日本は大和の国であることがよくわかります。
「和」を一躍有名にしたのが、かの聖徳太子です。太子の十七条憲法の冒頭には「和を以って貴しと為す」と書かれています。
 十七条憲法の根幹は、まさに「和」というコンセプトに尽きます。しかもその和は、横の和だけではなく、縦の和をも含んでいるところにすごさがあります。
「人の和」こそ最強である
 「天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず」とは『孟子』の言葉です。天の時、つまりタイミングは立地条件には及びません。しかし、立地条件も「人の和」には及ばないという意味ですね。人の和がなかったら、会社の発展もありません。組織の結束力を高めることは、仕事を成功させることにおいて非常に大事なのです。いわば、「人の和」こそは最強であると言えるでしょう。
 『孟子』が出てきましたが、じつは日本文化のキーワードである「和」はメイド・イン・ジャパンではありません。
 聖徳太子の「和を以って貴しと為す」は太子のオリジナルではなく、『論語』に由来します。
 「礼の用は和を貴しと為す」が学而篇にある。「礼のはたらきとしては調和が貴いのである」の意味です。聖徳太子に先んじて孔子がいたわけですね。
君子は和して同ぜず
 『論語』にはもう一つ「和」が出てくる有名な語句があります。
 「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」です。「和」とは、自分の主体性を堅持しながら他と協調すること。「同」とは、付和雷同のこと。したがって、この言葉の意味は「君子は協調性に富むが、無原則な妥協は排斥する。小人は逆である。やたらと妥協はするけれども、真の協調性には欠けている」となります。
 日本の社会では、昔から和が強調されていますが、孔子のこの言葉に照らしてみると、わたしたちの理解している和に問題がないわけではありません。なぜなら、和が強調されるあまり、個人が組織の中に埋没する傾向が強いからです。また、全体の和に腐心するがゆえに確かな責任の追及ができない。あるいは、リーダーとしての責任ある判断や決断が振り回されて迷うなど。孔子に言わせれば、それは和よりも同に近い。結局、日本人は和と同を混同しているのかもしれません。
「和のこえ」で福が来る
 「和」といえば、わが社には「和のこえ」という企業文化があります。全員で手をつなぎ、「がんばろう!」を三回唱和しながら両手を上下に動かします。これで福が来ます。
 今ではすっかりサンレー名物となった「和のこえ」ですが、今から40年も前に、北九州に中曽根康弘大勲位が来られたとき、佐久間会長の挨拶の後に、みんなで手を組んで「和のこえ」を行ったそうです。
 それ以来、佐久間会長が中曽根大勲位にお会いするたびに、「あのときの盛り上がりは素晴らしかったね」と言われたそうです。思えば、中曽根通産大臣時代に、冠婚葬祭互助会の法制化が成立したのでした。
 この「和のこえ」をやると、本当にその場にいる人々の心が一体となります。新しい仲間を迎えて、わたしは本当に心強く思っています。「天下布礼」を遂行するための援軍を得たという心境です。ぜひ「和のこえ」で、さらなる発展をめざしましょう。
 手をつなぎ人の輪つくり和をつくり
       声をあげれば福ぞ来れり  庸軒