マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2022.12

映画で心ゆたかになる 友引映画館で映縁をつくろう!

●「レッドシューズ」の先行上映
北九州市は、人口一人当たりの映画館数が日本一の映画都市です。わが社は、市内のシネコンで全上映作品にCMを流しています。その北九州市でオールロケを敢行した日本映画「レッドシューズ」(雑賀俊朗監督)が北九州で先行上映されます。その記念舞台挨拶で、わたしは主演女優の朝比奈彩さんに花束を贈呈しました。
というのも、この映画に出演したからです。といっても、チョイ役です。わたしは葬儀場でのシーンに、主人公・真名美の親戚の役で出演しました。交通事故で亡くなった真名美の両親の葬儀のシーンですが、わが社の小倉紫雲閣で撮影されました。
小倉紫雲閣で撮影された映画といえば、2018年に公開された「君は一人ぼっちじゃない」(三村順一監督)でも舞台になりました。この映画では、松柏園ホテルでの宴席シーンも登場し、わたしは富豪役で出演。
映画といえば、拙著『愛する人を亡くした人へ』を原案とした映画「愛する人」(仮題)の製作が決定しています。驚くような有名俳優さんが出演するので、お楽しみに!
さらには、文部科学省の推奨を受けたグリーフケアのドキュメンタリー映画の製作も決定し、こちらにもわたしが出演します。

●映画館で臨死体験する
儀式というものは古代の洞窟で誕生したと言われています。ネアンデルタール人の埋葬も洞窟の中でした。そして、映画館とは人工洞窟であるというのが、わたしの考えです。その人工洞窟の内部において、わたしたちは臨死体験をするように思います。
なぜなら、映画館の中で闇を見るのではなく、わたしたち自身が闇の中からスクリーンに映し出される光を見るからです。
闇とは「死」の世界であり、光とは「生」の世界です。つまり、闇から光を見るというのは、死者が生者の世界を覗き見るという行為にほかならないのです。
つまり、映画館に入るたびに、観客は死の世界に足を踏み入れ、臨死体験するわけです。わたし自身、映画館で映画を観るたびに、死ぬのが怖くなくなる感覚を得るのですが、それもそのはず。わたしは、映画館を訪れるたびに死者となっているのでした。
さらに、映画を含む動画撮影技術が生まれた根源には人間が「死」を乗り越えたいという願いが込められていると思えます。

●映画は「死者との再会」を実現する
じつは、わたしは、すべての人間の文化の根底には「死者との交流」という目的があると考えています。そして、映画そのものが「死者との再会」という人類普遍の願いを実現するメディアでもあります。
わたしは、たくさんの映画を鑑賞する中で、奇妙な事実に気づきました。どんな映画を観ても、グリーフケアの映画だと思えてきたのです。ジャンルを問わず、どんな映画にも死者の存在があり、死別の悲嘆の中にある登場人物があり、その悲嘆がケアされる場面が出てきます。
この不思議な現象の理由として、わたしは3つの可能性を考えました。1つは、わたしの思い込み。2つめは、映画に限らず物語というのは基本的にグリーフケアの構造を持っているということ。3つめは、実際にグリーフケアをテーマとした映画が増えているということです。わたしとしては、その3つとも当たっている気がしました。

●すべての映画はグリーフケア映画
わたしが何の映画を観てもグリーフケアの映画に思えるということを知った宗教哲学者の鎌田東二先生からメールが届きました。それによれば、何を見ても「グリーフケア」に見えるというのは、思い込みや思い違いではなく、どんな映画や物語にも「グリーフケア」の要素があるのだといいます。
哲学者アリストテレスは『詩学』第6章で、「悲劇」を「悲劇の機能は観客に憐憫と恐怖とを引き起こして,この種の感情のカタルシスを達成することにある」と規定しましたが、この「カタルシス」機能は「グリーフケア」の機能でもあるというのです。しかし、アリストテレスが言う「悲劇」だけでなく、「喜劇」も「音楽」もみな、「カタルシス」効果を持っているので、すべてが「グリーフケア」となり得る。そのような考えを鎌田先生は示して下さいました。納得しました。

●友引映画館で「映縁」を!
コロナ前、わが社は互助会の会員様や高齢者の方向けに無料の映画上映会を行ってきました。紫雲閣の「セレモニーホールからコミュニティホールへ」の進化の一環です。最初は2018年7月21日に小倉紫雲閣の大ホールで開催された「友引映画館」でした。この上映会は、葬儀や告別式の比較的少ない友引の日に、映画を通じて交流を深めていただこうという意味で「友引映画館」と名付けました。ステージには大スクリーンが掲げられ、通常の映画館と変わりない迫力で映画が楽しめます。
2019年には友引映画館で「1939年映画祭」を開催しました。1939年は映画史における奇跡の年で、西部劇の最高傑作「駅馬車」、ラブロマンスの最高傑作「風と共に去りぬ」、ミュージカルおよびファンタジー映画の最高傑作「オズの魔法使」の3本が誕生しました。この3作が製作80周年を迎えた2019年に、わが社が3作を同時上映するという世界初の映画祭を開催したのです。多くの高齢者の方々が楽しんで下さいました。
わたしは、「同じ映画を観て心を通わせるというのは素晴らしい縁だ。映画の縁としての『映縁』だ」と思いました。映縁は永遠の心の結びつきとなります。そして、映画も冠婚葬祭も、人々に「共感」を生み出す総合芸術です。みなさんも、良い映画をたくさん観て、心ゆたかになって下さい!

銀幕に映る光の物語
闇より見つめ心ゆたかに  庸軒