マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2015.02

高野山開創1200年 超天才・空海に学ぼう!

●『超訳 空海の言葉』の上梓

今年は、高野山金剛峯寺開創1200年記念イヤーです。
高野山では4月2日から5月21日まで50日の間、弘法大師空海が残した、大いなる遺産への感謝を込めて、絢爛壮麗な大法会が執り行われます。こうした動きにあわせて、昨年末、わたしは一条真也として監訳書『超訳 空海の言葉』(KKベストセラーズ)を上梓しました。空海の言葉の数々を現代人にも容易に読めるように超訳したのです。
同書のオファーが来たとき、わたしは飛び上がって喜びました。というのも、わが佐久間家の宗派は真言宗であり、空海はいつか真正面から取り組んでみたい聖人だったからです。つねづね、「空海ほど凄い人はいない」と思っていました。
昨年の初めには、ブッダの本心を紹介した『慈経 自由訳』(三五館)を上梓しました。ブッダに始まり空海に終わった1年ということになりますが、本当にありがたいことです。

 

●日本人初の人類的存在

神秘と謎の光に包まれ、加持祈祷で有名な宗教家でもあった空海は、死後「弘法大師」の称号を受けました。そのスケールの巨大さについて、司馬遼太郎は「空海だけが日本の歴史のなかで民族社会的な存在でなく、人類的な存在だったということがいえるのではないか」と、名著『空海の風景』(中公文庫)に書いています。密教を通じて、空海はすでに、人間とか人類というものに共通する原理を知ったというのです。至言だと思います。
「日本最大の宗教的天才」であった空海は、『三教指帰』『十住心論』『秘蔵宝鑰』『般若心経秘鍵』『文鏡秘府論』、空海本人の詩文や書簡、上表文などを集めた『性霊集』など、多くの著書を残しています。その傑出した文才には驚くばかりです。例えば、『三教指帰』はプラトンの『対話篇』同様に劇的な構成で書き上げられています。また、『十住心論』ではヘーゲルの『精神現象学』にも対比すべき弁証法的思考が展開されています。

 

●空海という天才が考えたこと

このように、空海とは思想家としても超スケールの巨人でした。それゆえに、空海の思想は難解であるとされ、その著作そのものを読もうとする強者はごく一部だったのです。しかし、空海のメッセージは現代人の心にも届きますし、しっかりと励ましてくれます。
『超訳 空海の言葉』のカバーには、「空海という天才が考えていたこと」として、以下のようなシンプルな言葉が並んでいます。
・わたしたちは、独りで生まれて、一人で死んでいく。
・誰もが勝ち負けに夢中になっているが、そんなことはどうでもいい。
・悩みの原因は、ひとつしかない。それは「無知」である。
・あなたのやりたいことは、あなたの手でやらなければならない。
・両親の愛というものは、天よりも高く、地よりも深い。

 

●人生が楽になる空海の三つの教え

本を開くと、その冒頭に【人生が楽になる空海の三つの教え】が紹介されています。
「正しく修行すれば、誰でも生きたまま仏になれる」と説いた空海。
他の高僧たちとは一味違う、力強い言葉を残しています。
1、迷いあってこそ人生。悩むことを避けなくていい。人間なら誰しも悩みのひとつやふたつ抱えていて当然。悩みを解決することに囚われず、あるがままで生きよう。変わらないものなどないから、いつしか悩みも消える。
2、誰にでも、見違えるほど成長する可能性が秘められている。最初から何でもできる人などいない。懸命に学んで進歩・成長すれば、無限の可能性が広がっていく。自分の心の奥底に眠っている能力を信じよう。
3、人と向き合うときは、相手の目線の高さに立て。子どもには子どもの目線の高さに立って話し、大人には大人の目線の高さで向き合う。簡単そうに見えて、なかなか難しい。
これができる人は、すばらしい人物であると、空海は述べています。

 

●弘法大師が支えてくれる

空海は「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなっています。「日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ」の異名が示すように、空海は宗教家や能書家にとどまらず、教育・医学・薬学・鉱業・土木・建築・天文学・地質学の知識から書や詩などの文芸に至るまで、実に多才な人物でした。
ノーベル物理学賞を日本人として初めて受賞した湯川秀樹博士は、空海について「一言で言いえないくらい非常に豊かな才能を持っており、才能の現れ方が非常に多面的。10人分の一生をまとめて生きた人のような天才である」と述べています。そんな超天才の言葉を、わたしは一つひとつ噛みしめながら、現代に生きる日本人にわかりやすいように、心をこめて『超訳 空海の言葉』世に送りました。発売直後には、アマゾンの「仏教入門」および「密教」カテゴリーでベストセラーの1位に輝きました。これはもう、弘法大師の御利益としか思えません。
そこで先月、「日本一の弘法大師像」で有名な延岡の今山大師に同書および道歌を奉納してきました。本が好評であることを、きっと弘法大師も喜んで下さっていると思います。高野山の地より、今年のサンレーグループを支えて下さるように思えてなりません。

 

今ここに弘法大師おはします
永遠(とわ)の真言 世をば照らさん  庸軒