血みどろの競争から脱け出し ブルー・オーシャンをめざそう!
●ブルー・オーシャン戦略
いま、ビジネスの世界では「ブルー・オーシャン戦略」という言葉がよく使われます。ブルー・オーシャンとは、文字通り、「青い海」。その反対は、レッド・オーシャンです。
ブルー・オーシャン戦略とは、血みどろの戦いが繰り広げられるレッド・オーシャンから抜け出す戦略のことです。そのための手法は、競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にすること。
ブルー・オーシャン戦略は、縮小しがちな既存の市場を分け合うのではなく、競合他社との比較を行なうのでもなく、あくまでも需要を押し上げて、競争そのものから抜け出すことを目的とします。
ブルー・オーシャン戦略は、未開拓の市場を生み出すのです。血みどろの戦いが繰り広げられる赤い海を脱出して、自分だけは美しい青い海に漕ぎ出すことができるのです。
●SONYとウォークマン
具体的に日本におけるブルー・オーシャン戦略の具体例を見てみましょう。まず、音響機器の世界からです。
かつて、スピーカーは原音に忠実な音の再生をめざしていました。そのために各メーカーは莫大な開発費をかけて高性能のスピーカーを製造。一台で数百万円もするものも売り出されていました。競争は激しく、市場は完全に飽和。そこに、ある後発メーカーが画期的な商品を開発しました。
その会社の名は、ソニー。音楽を聴くという行為の本質を熟考したすえ、ソニーが出したアイデアは空気の振動を介さずに直接、耳に音楽を送り込むというものでした。そして誕生した商品こそ、かのウォークマンです。ウォークマン、すなわちヘッドフォンステレオはまったく新しい市場を開拓し、ソニーは世界最大の音響メーカーにまで登りつめます。
●失敗したPS3
しかし、ソニーはゲーム機器の市場においては、かつての音響メーカーとまったく同じ失敗を犯してしまいました。 ゲーム市場、特にゲームソフト市場は1997年をピークに縮小を続け、2003年にはピーク時の約半分の市場になっていました。そんな中で、発売されたソニーのプレイステイション3(PS3)は高価格もあって、思ったほどの売れ行きを見せることができませんでした。
なぜ、高価格になったのか。それは、家庭用ゲーム機の理想をゲームセンターの商業用ゲーム機に置いたからです。ドライブゲームにしろ、シューテイングゲームにしろ、商業用の画像は非常に鮮明で、動きはなめらか。家庭用のレベルもそれに近づけるべく、莫大な開発費をかけた結果、PS3の値段は非常に高くなってしまったのです。しかも、その本質は既存のゲーム機を超えるものではありませんでした。
●任天堂のWii
PS3とほぼ同時期に発売されたゲーム機が任天堂のWiiです。こちらは大成功し、完全に明暗を分けました。
Wiiが登場する前、ゲームの主なユーザーは若い男性と子どもでした。しかし、Wiiは主婦やおじいちゃん、おばあちゃんといった、新しいユーザー層を巻き込んでゲーム市場を拡張しています。任天堂は既存のゲーム業界におけるシェア獲得合戦というレッド・オーシャンから抜け出すことに成功しました。
まさに、Wiiこそは、かつてウォークマンが果たしたようにブルー・オーシャン戦略を実現したのです。そして、新しい大きな市場を創造したのでした。
体を動かしながら遊べるゲームであり、家族一緒に楽しめるゲーム。Wiiは、新しい価値をも創造したのです。これを「バリュー・イノベーション」といいます。
●新しい組み合わせをさがせ!
ブルー・オーシャン戦略は、主に「増やす」「付け加える」「減らす」「取り除く」の四つのアクションが中心ですが、わたしは「組み合わせる」が非常に重要であると、注目しています。
全米ナンバーワンのコンサルタントとして知られるジェイ・エイブラハムの『ハイパワー・マーケティング』金森重樹監訳(インデックス・コミュニケーションズ)という本の冒頭に登場するエピソードですが、アイスクリームが発明されたのは紀元前2000年です。アイスクリームコーンは3900年後に登場しました。それまで、この世にソフトクリームはなかったわけです。また、紀元前2600年にはパンがすでに焼かれていましたが、そのはるか以前から人類は肉を食べていました。ところが、その二つを組み合わせてハンバーガーをつくったのは、それから4300年も後のことでした。
わたしは、まだまだ結ばれていない運命のカップルがこの世には無限に存在すると思っています。この世界には、未だその姿を見せていないソフトクリームやハンバーガーのような商品があるに違いない。そして、それを発見したとき、発見者は大きな青い海に漕ぎ出すことができるのです。
●ブルー・オーシャンに向って
もともと冠婚葬祭互助会というビジネスモデルそのものがブルー・オーシャン戦略だったのではないでしょうか。結婚式場、衣裳店、写真スタジオ、そして葬祭業などを見事に組み合わせたからです。そして、サンレーが推進している「隣人祭り」や「グリーフケア・ワーク」がまさに新しい市場を開拓すると思います。
人間の死というものを「イン」だととらえた場合、「隣人祭り」は「ビフォアー」であり、グリーフケア・ワークとは「アフター」です。同様に、長寿祝いは「ビフォアー」であり、法事・法要は「アフター」です。
冠婚葬祭という営みの本質を考え抜き、新しい組み合わせの可能性を知りましょう。
さあ、いま帆を上げて、青い大海原をめざそうではありませんか!
赤き血を見るのが嫌と思ふなら
いざ漕ぎ出さん青き海原 庸軒