全互連の会長に就任 互助の心で有縁社会を!
●全互連の会長に就任
全国冠婚葬祭互助会連盟(全互連)といえば、かつては「平安閣グループ」と呼ばれた冠婚葬祭互助会の保守本流です。
互助会とは、その名の通りに「相互扶助」をコンセプトとした会員制組織です。終戦直後の1948年に、西村熊彦という方の手によって、日本最初の互助会である「横須賀冠婚葬祭互助会」が横須賀市で生まれました。
横須賀から名古屋へ波及し、そこで大きく花開きました。さらには静岡や姫路へ、そして日本全国に広まっていきました。
6月3日に熊本で開催された全互連第56回定時総会において、わたしは全互連会長の要職をお引受けすることになりました。
最初に会長のお話を頂いた時はまさに青天の霹靂でした。しかし佐久間会長とも相談の結果、不肖の身を顧みず、甚だ微力ながら冠婚葬祭業界並びに全互連加盟互助会の発展のために会長をお引受けすることにしました。
●互助会とは何か
互助会のルーツは、きわめて日本的文化に根ざした「結」や「講」にさかのぼります。
「結」は、奈良時代からみられる共同労働の時代的形態で、特に農村に多くみられ、地域によっては今日でもその形態を保っているところがあります。
一方、「講」は、「無尽講」や「頼母子講」のように経済的「講」集団を構成し、それらの人々が相寄って少しずつ「金子」や「穀物」を出し合い、これを講中の困窮者に融通し合うことをその源流としています。
このような「結」と「講」の二つの特徴を合体させ、近代の事業として確立させたものこそ、冠婚葬祭互助会というシステムです。
日本的伝統と風習文化を継承し、「結」と「講」の相互扶助システムが人生の二大セレモニーである結婚式と葬儀に導入され、互助会は飛躍的に発展してきました。
わたしは冠婚葬祭に代表される儀式とは「文化の核」であると思っていますが、互助会は戦後の日本社会で「文化の核」を守ってきたとも言えます。
●無縁社会と互助会
いわゆる「無縁社会」の到来をはじめ、現代の日本社会はさまざまな難問に直面しています。その中で互助会の持つ社会的使命はますます大きくなっています。じつを言うと、「無縁社会」の到来には、互助会の存在そのものが影響を与えた可能性があります。
互助会は、敗戦で今日食べる米にも困るような環境から生まれてきました。そして、わが子の結婚式や老親の葬儀を安い価格で出すことができるという「安心」を提供するといった高い志が互助会にはありました。
しかし、互助会は便利すぎたのかもしれません。結婚式にしろ葬儀にしろ、昔は親族や町内の人々にとって大変な仕事でした。みんなで協力し合わなければ、とても冠婚葬祭というものは手に負えなかったのです。
それが安い掛け金で互助会に入ってさえいれば、後は何もしなくても大丈夫という時代になりました。そのことが結果として血縁や地縁の希薄化を招いてきた可能性はあります。
●互助会の責任と義務
また、現代日本人のほとんどは葬儀をセレモニーホール、つまり葬祭会館で行います。わが社では、1978年に「小倉紫雲閣」をオープンしました。その後、全国でも最も高齢化が進行した北九州市をはじめ、各地に猛烈な勢いでセレモニーホールが建設され、今ではその数は全国で6000を超えています。
このセレモニーホールの登場が、また日本人の葬儀およびコミュニティに重大な変化を与えたと多くの宗教学の研究者が見ています。互助会が日本人の血縁や地縁を希薄化させ、セレモニーホールが仏教者から「こちら側」へ葬儀の主導権を奪ったというのです。
もし、そうだとしたら、互助会には大きな責任があります。そして、「無縁社会」を「有縁社会」に変える、いや再生する義務があるのではないでしょうか。ということで、わが社は「隣人祭り」をはじめとした様々な世直し活動に取り組んでいます。
もちろん、互助会の存在は社会的に大きな意義があることは事実です。戦後に互助会が生まれたのは、人々がそれを求めたという時代的・社会的背景があったはずです。そうでなければ互助会はビジネスとして成立しえなかったからです。
●「天下布礼」の大いなる前進
もし互助会が成立していなければ、今よりもさらに一層「血縁や地縁の希薄化」は深刻だったのかもしれません。つまり、敗戦から高度経済成長にかけての価値観の混乱や、都市への人口移動、共同体の衰退等の中で、何とか人々を共同体として結び付けつつ、それを近代的事業として確立する必要から、冠婚葬祭互助会は誕生したのです。
ある意味で、互助会は日本社会の無縁化を必死で食い止めてきたのかもしれません。しかし、それが半世紀以上を経て一種の制度疲労を迎え、システム異常を起こそうとしている可能性があります。今こそ「相互扶助」という初期設定と、「有縁社会」を再生するためのアップデートが求められています。
繰り返しますが、全互連は冠婚葬祭互助会の保守本流です。
保守とは、守るべきものを守るために改革することです。守るべきものとは、「文化の核」としての日本人の儀式であり、それを支える「相互扶助」の心です。それらを守る全互連とは、ある意味で日本文化を守る「文化防衛軍」かもしれません。
わたしは全互連の新会長として、互助の心を取り戻し、有縁社会を再生するため全力で臨む覚悟です。そして、それはそのまま「天下布礼」の大いなる前進となるでしょう。
日の本のこころとかたち守るため
天下布礼をさらに進めん 庸軒