マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2026.03

「ほどなく、お別れです」を観て 葬儀の意味と役割を考える

●「ほどなく、お別れです」
 日本映画「ほどなく、お別れです」を観ました。素晴らしい感動作でした。
 長月天音氏の小説を、浜辺美波と目黒蓮主演により実写映画化したものです。ある出会いをきっかけに葬儀会社でインターンとして働き始めた女性が、彼女を指導する葬祭プランナーと共にさまざまな境遇の遺族や故人に向き合います。
 就職活動に全敗し途方に暮れる清水美空(浜辺美波)は、葬祭プランナー・漆原礼二(目黒蓮)との出会いをきっかけに葬儀会社『坂東会館』でインターンとして働き始めます。指南役となった彼の厳しい指導にくじけそうになる美空でしたが、礼二が遺族や故人に誠実に寄り添い、出棺時に「ほどなく、お別れです」と優しく告げる姿に感銘を受けます。残された遺族のみならず故人も納得できる葬儀を模索する中、美空は礼二の背中を追いかけるように葬祭プランナーを目指すことを決断するのでした。

●「葬式は必要!」というメッセージ
 この映画では原作シリーズの中でも特に人気の高いエピソードを選び、ショート・ストーリーが次々に連なっていく構成になっています。1つのエピソードは、目黒蓮演じる葬祭プランナー・漆原礼二の「ほどなく、お別れです」の言葉によって終わります。
 わたしはこの映画が公開されるのを非常に楽しみにしていましたが、じつによく出来ていると思いました。まずは「葬式は必要!」という真っ直ぐなメッセージが伝わってきました。また葬儀を、人生をどう締めくくるかという“思想の仕事”として描いているのが印象的でした。正解を用意するのではなく、遺族が悔いのないところまで伴走しなければなりません。改めて、この仕事は理念というものがないと成立しない仕事だと再認識しました。葬祭の仕事は、社会に必要とされるハートフル・エッセンシャルワークです。そのことは、いつもみなさんにお伝えしていますので、よく理解されていることと思います。

●「おくりびと」へのオマージュ
 映画「ほどなく、お別れです」を観て、わたしは日本映画「おくりびと」へのオマージュあるいはリスペクトを強く感じました。
 「おくりびと」の主人公は、楽団の解散でチェロ奏者の夢をあきらめ、故郷の山形に帰ってきた大悟(本木雅弘)です。彼は好条件の求人広告を見つけます。面接に向かうと社長の佐々木(山崎努)に即採用されますが、業務内容は遺体を棺に収める仕事でした。当初は戸惑っていた大悟でしたが、さまざまな境遇の別れと向き合ううちに、納棺師の仕事に誇りを見いだしてゆきます。
 「おくりびと」は日本映画として初めてアカデミー外国語映画賞に輝いた名作ですが、本木雅弘が演じる納棺師の所作の美しさが世界中の観客に感動を与えました。特に、彼の指の動きが美しかったのですが、「ほどなく、お別れです」では、元ジャニーズ事務所の後輩である目黒蓮が見事に再現していました。

●葬儀は誰のためか
 「ほどなく、お別れです」の中には、多額の借金を抱えて失踪した父親(原田泰造)と息子と娘が、母親の葬儀をきっかけに再会し、和解するエピソードが登場します。
 葬儀という場は、故人の関係者たちの「出会い直し」の場であるということがよく描かれていました。また、このエピソードでは、「葬儀とはいったい誰のためのものなのか」という問いがありました。死者のためか、残された者のためか。わたしは、多くの著書で述べてきたように、葬儀とは死者のためのものであり、同時に残された愛する人を亡くした人のためのものであると思います。たとえ愛する人が死者となっても、残された人との結びつきが消えることはありません。その問題について深く考えた人物が、ドイツの神秘哲学者ルドルフ・シュターナーです。彼によれば、死者と生者との関係は密接であり、それをいいかげんにするということは、わたしたちがこの世に生きることの意味をも否定することになりかねないというのです。

●新たな儀式映画を作りたい
 映画「ほどなく、お別れです」の浜辺美波と目黒蓮の主演コンビが本当に素晴らしかったです。浜辺美波はひたすら可愛らしく、目黒蓮はひたすらカッコ良く、さらに彼の声の良さが印象に強く残りました。
 葬祭という仕事の素晴らしさも最大限に表現されており、これは求職者に響いて、採用にも好影響がありそうです。とても嬉しく思いました。ただ、わたしたち冠婚葬祭互助会業界がちょっと引き気味なのは、この映画では「葬祭プランナー」という言葉が使われていることです。業界では「葬祭ディレクター」という言葉を使います。また、原作でも「葬祭ディレクター」が使われていました。
 しかし、ウェディング・プランナーという場合の「ウェディング」は儀式としての結婚式というより、パーティーやイベントとしての結婚披露宴を指すことが多いように思います。葬儀という儀式は正しく司ることが求められ、やはり「ディレクター」の方がふさわしいのではないでしょうか。わたしは、そう思います。
 わたしは、ぜひ「ほどなく、お別れです」を超える葬儀映画を作りたいと考えています。その原作者は、現代日本を代表する人気作家である町田そのこ氏です。
 町田氏は葬儀社での勤務体験を生かした『ぎょらん』や『夜明けのはざま』という葬儀小説の大傑作も書かれています。この素晴らしい原作をもとに葬儀の本質と重要性をエンターテインメントとして示せるような儀式映画を作りたいです。

 亡き人と別るる人に寄り添ひて 
  こころを守るわれらの務め  庸軒