マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2026.04

民衆的儀礼としての民禮 文化を守る礼人となろう!

●新入社員を迎えて
 4月1日、サンレーグループの入社式を行いました。今年も多くの新入社員のみなさんを迎えました。心より歓迎いたします。
 いつも入社式の日になると、社長として、新入社員のみなさんの人生に関わることに対して大きな責任を感じます。
 そして、世の中の数多くある会社の中から、サンレーを選んで下さったことに感謝の気持ちでいっぱいです。
 世の中には農業・漁業・林業・工業・商業など、さまざまな仕事がありますが、冠婚葬祭業とは「礼業」です。そして、わが社のミッションは「人間尊重」であり、「礼」の精神に通じます。具体的には、「冠婚葬祭を通じて、良い人間関係づくりのお手伝いをする」ということ。冠婚葬祭は目に見えない「縁」と「絆」を可視化して、目に見せてくれます。そして、冠婚葬祭とは日本文化の集大成。わが社の社員は「礼の社」の「文化の防人」と言えるでしょう。

●人間国宝との対談
 第49回の日本アカデミー賞は、ブログ「国宝」で紹介した日本映画が10部門で最優秀賞に輝き、大旋風を起こしました。歌舞伎界の物語でしたが、素晴らしい傑作でした。
 映画「国宝」は、吉沢亮が演じる歌舞伎役者が史上最年少で人間国宝になる物語でしたが、もちろんフィクションです。リアルの世界で史上最年少となられた人物は、陶芸家の第14代 今泉今右衛門先生です。
 3月23日、わたしは今右衛門先生と松柏園ホテルで対談しました。「こころ」と「うつわ」と「かたち」をめぐって、日本文化の本質について語り合いました。
 今泉今右衛門といえば、江戸時代から伝統に受け継がれている肥前国(現・佐賀県)の陶芸家の名跡です。江戸時代から続き、「鍋島焼」の伝統を受け継いでいます。色絵は「色鍋島」と呼ばれ、伝統と高い品格を持ち、赤絵の調合・技術についてはこだわりを持ち、一子相伝の秘宝として伝えられています。まさに、日本の伝統文化の継承者です!

●柳宗悦と民藝
 わたしは父である佐久間名誉会長から陶芸コレクションを相続しましたが、正直言って、わたし自身はそれほど陶芸には詳しくありません。それで、今年に入ってから陶芸を含む工芸について猛勉強しました。その中で、工芸研究の第一人者として知られた柳宗悦(1889年~1961年)の一連の著書を読みました。
 日本の美術評論家、宗教哲学者、思想家であった柳宗悦は若い頃から宗教哲学、近代美術に関心を寄せ、武者小路実篤や志賀直哉の「白樺派」にも参加しました。
 「民藝」という言葉を世に送り出した民藝運動の父として知られています。 それまで顧みられることのなかった、無名の職人が作る日常の雑器に「用の美」を見出し、その美学的価値を体系化しました。
 彼は日本を代表する宗教哲学者でしたが、同じく宗教哲学者であった鎌田東二先生は柳宗悦を深くリスペクトし、晩年はその研究に取り組んでおられました。

●礼は器で完成する!
 今右衛門先生との対談で、わたしは儀礼文化について語りました。宗教儀礼から直接導き出され、大きな発展を遂げた代表的なものといえば、茶道が第一にあげられます。
 茶道は宗教儀礼の中、仏教を基盤として生まれた儀礼文化でした。具体的には禅宗の茶礼をその出発点としたものであり、それが日本文化の土壌の上で、ゆたかに育成されたものだったのです。
 茶道からは華道が派生しました。
 華道の場合も仏前に花を献り、また花を飾ることが、基礎をなしたことは考えられます。さらにそれ以前に祭りに花を飾る風習も存しました。しかし、そうした仏前献花の信仰習俗が、「活け花」として形成される段階に到達するためには、茶の湯の母胎を通ることが必要なのでした。
 ちなみに、茶の湯には茶器、生け花には花器、いずれも陶器を「うつわ」として使います。まさに、儀礼文化と工芸文化のコラボ。さらには、儀礼文化は工芸文化によって完成すると言えるかもしれません。

●民禮という発見
 対談の中で、わたしは新しい言葉を提唱しました。「民禮」という言葉です。これは「有職故実」に代表される宮中儀礼などと一線を画す民衆的儀礼の意味です。具体的には「冠婚葬祭」や「年中行事」のことです。
 歌舞伎や大相撲といった日本文化は素晴らしいですし、歌舞伎役者や力士は日本の誇りです。また、茶道や華道に励む方々も素晴らしいと思います。
 しかし、本当の意味で日本文化を継承し、守っているのは民衆ではないでしょうか。一般的な日本人が節分で豆まきしたり、雛人形を飾る。初宮参りや七五三をしたり、葬儀や法事をする。これこそが、日本文化を守っていることであり、「礼」を実践することです。そう、日々の生活の中に「礼」は息づいているのです。民藝が民衆的工芸なら、民禮は民衆的儀礼です。
 柳宗悦は民藝に携わってきた名もなき職人たちのことを「工人」と呼びました。それにならって、わたしは民禮に携わる冠婚葬祭業者のことを「礼人」と呼びたいと思います。工人も礼人も「文化の防人」という点では同じですが、ともに民衆のための存在です。
 改めて考えてみると、冠婚葬祭互助会とは貴族や大名や富豪のための組織ではありません。互助会は民衆のための組織であり、そこで働く礼人たちは「民禮」という儀礼文化、ひいては日本文化を守るのです。これほど価値があって、働きがいのある仕事はありません。わたしたちは、高い誇りをもって進んでいきましょう!

 日の本の文化を守る民禮の
  礼人集ふ礼の社よ  庸軒