マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2024.09

サービス業から文化産業へ 冠婚葬祭は文化の核である!

●財団の理事長に就任
 このたび、わたしは、一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団の理事長に就任いたしました。これまで、わたしは同財団の副理事長を6年間務めてきましたが、今年8月8日の評議員会で新理事長になることが決定し、理事のみなさんの書面で決定。
 一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)と財団の理事の顔ぶれはほとんど同じですので、8月21日に北海道の函館市で開催された全互協総会で挨拶をさせていただきました。
 挨拶に立ったわたしは、まず、「このたび冠婚葬祭文化振興財団の理事長に就任いたしました佐久間でございます。一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団は、人の一生に関わる儀礼である冠婚葬祭に代表される様々な人生儀礼の文化を振興し、次世代に引き継いで行くための事業を行い、我が国伝統文化の向上、発展に寄与することを目的として、平成28年に設立されました」と述べました。

●冠婚葬祭は「文化の中の文化」
 それから、「設立より8年目を迎えるに当たり、本財団としての独自性を出していくために、本年度より新たに立ち上げた儀式委員会と資格委員会を中心に財団事業を推進してまいります。今後も本財団は、全互協と連絡を密に協力して、互助会業界の環境の整備に貢献してまいる所存であります」と述べました。記念すべき設立10周年を理事長として迎えることになり、身の引き締まる思いです。
 そして、「日本には茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲・武道など、さまざまな伝統文化がございます。しかしながら、わたしは冠婚葬祭こそ文化の中の文化、『文化の核』であると思っております。冠婚葬祭文化の振興という仕事を天命ととらえ、全身全霊、命をかけて取り組む所存です。皆様方におかれましては、引き続き本財団の事業に対しまして、ご支援、ご協力をお願いいたしまして理事長就任のご挨拶とさせていただきます」と述べて降壇しました。会場からは盛大な拍手を頂戴し、感激いたしました。

●「かたち」と「こころ」
 わたしは、冠婚葬祭業を単なる「サービス業」から「ケア業」への進化を提唱してきましたが、さらには「文化産業」としてとらえる必要があることを訴えたいです。
 文化とは何でしょうか。「日本文化」といえば、代表的なものに茶道があります。わが社の佐久間進名誉会長が小笠原家茶道古流の会長を務めている関係で、わたしも少しだけ茶道をたしなみます。
 茶道といえば、茶器が大切です。茶器とは、何よりも「かたち」そのもの。水や茶は不安定です。それを容れるものが器です。水と茶は「こころ」です。「こころ」も同じように不安定です。ですから、「かたち」としての器に容れる必要があるのです。
 その「かたち」には別名があります。「儀式」です。茶道とはまさに儀式文化であり、「かたち」の文化です。人間の「こころ」は、どこの国でも、いつの時代でも不安定です。だから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。

●サービス業としての冠婚葬祭業
 現在の日本社会は「無縁社会」などと呼ばれています。しかし、この世に無縁の人などいません。どんな人だって、必ず血縁や地縁があります。そして、多くの人は学校や職場や趣味などでその他にもさまざまな縁を得ていきます。
 この世には、最初から多くの「縁」で満ちているのです。ただ、それに多くの人々は気づかないだけなのです。「縁」という目に見えないものを実体化して見えるようにするものこそ冠婚葬祭なのです。
 自動車産業をはじめ、産業界には巨大な業界が多いです。その中で冠婚葬祭業の存在感は小さいです。サービス業に限定してみても、大きいとは言えません。冠婚市場は約2兆円、葬祭市場は約1兆7000億円、互助会市場は約8000億円とされていますが、サービス業と同じ第三次産業である卸売業・小売業の約540兆円に敵わないことは言うに及ばず、情報通信業の約83兆円、運輸業・郵便業の約71兆円とも比較にもなりません。

●冠婚葬祭業は最大の文化産業
 「サービス業」としてとらえると小さな存在にすぎない冠婚葬祭業ですが、「文化産業」としてとらえると一気に存在感が大きくなります。日本伝統文化の市場規模を見ると、茶道が約840億円です。授業料・会費・着付け・交際費・交通費など茶道に関するすべての消費を含むと約1639億円。他の伝統文化の市場規模は、華道が約332億円、書道が約399億円、歌舞伎が約30億円(歌舞伎座の売上)、大相撲が約100億円(日本相撲協会の売上)となっています。
 冠婚葬祭業を冠婚葬祭という日本の伝統文化を継承する文化産業としてとらえれば、一転して最大の存在となるのです。
 また、冠婚葬祭とは単なる文化の一ジャンルではありません。わたしはかつて、冠婚葬祭業国際交流研究会の座長として、世界中を視察しましたが、世界各国のセレモニーには、その国の長年培われた宗教的伝統や民族的慣習などが反映しています。儀式の根底には「民族的よりどころ」というべきものがあるのです。
 日本には、茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲・武道といった、さまざまな伝統文化があります。そして、それらの伝統文化の根幹にはいずれも「儀式」というものが厳然として存在します。すなわち、儀式なくして文化はありえません。儀式とは「文化の核」と言えるでしょう。わたしたちは、日本人の「こころ」を守る「かたち」という、文化の核を担っているのです。

 ころころと動く心を落ち着かす
  素晴らしきかな冠婚葬祭  庸軒