挨拶が心の窓を開く 愛語で相手を元気にしよう!
●挨拶は「人間尊重」の基本
およそ、人間関係を考えるうえで挨拶ほど大切なものはないでしょう。
何よりまず「人間尊重」の基本となるものであり、「こんにちは」や「はじめまして」の挨拶によって、初対面の相手も心の窓を開きます。
すべては挨拶からはじまります。会社の一日も「おはようございます」の一言からスタートします。そして、お客様をお迎えしたら「いらっしゃいませ」と大きな声で挨拶することは言うまでもありません。
沖縄では「めんそーれ」という古くからの挨拶言葉が今でも使われています。この「めんそーれ」という挨拶は「かなみ」と言われるそうです。これは挨拶が人間関係の要(かなめ)であることを意味します。挨拶が上手な人を「かなみぞうじ」といい、「かなみかきゆん」は「挨拶を欠かさない」「義理を欠かさない」という意味だそうです。
まさしく挨拶は人間関係の要です。
●「おはよう」には「おはよう」
サンレーグループのみなさんは、どんな会社の社員よりも挨拶の達人であってほしいと願っています。ただ残念なことに、ごく少数ですが、部下の挨拶を軽んじる上司が今でもいるようです。
朝、部下が「おはようございます」と言っても返さなかったり、部下が話しかけても無視したり、何が面白くないのかは知りませんが一日中平家蟹(へいけがに)のような仏頂面で部下を威圧したりする者がいるということです。こういう管理職は百害あって一利なし。
若い社員が「今日も一日、がんばるぞ!」と張り切って「おはようございます」の挨拶をしているのに、返事もしないような上司というのは言語道断。その上司は部下の勤労意欲を下げているわけで、社長の私から見れば立派な営業妨害です。営業妨害をする人を会社に置いておくわけにはいきませんので、心当たりのある人は、今日にでも辞表を書いて辞めて下さい。
また、「おはようございます」に「おはよう」で返してはいけません。簡単に「おはよう」と言えば「おはよう」と返されても仕方ありません。これは江戸しぐさの精神でもありますが、山のこだまと同じで自分の心構え、言葉づかい次第で相手もそのように応じるから注意が肝心という戒(いまし)めですね。
今度、部下や後輩が「おはようございます」と言ったら、上司や先輩も「おはようございます」と言ってみて下さい。会社において、上に立つ人も下に立つ人も、人間としては平等であるということを決して忘れてはなりません。
●世辞(せじ)を重視した江戸しぐさ
「繁盛しぐさ」の別名もある江戸しぐさは、もちろん挨拶を重視しました。特に「こんにちは」は「今日は御機嫌いかが」の省略語として江戸の商人は愛用しました。
そして、「こんにちは」の後に挨拶言葉が言えるかどうかが、人付き合いを大切にする商人たちにとって大事でした。子どもたちは寺子屋で世辞(せじ)の心得を学んで、身につけたといいます。
世辞とは、「へつらい」や「おべんちゃら」を言うことではありません。人間関係を円滑にする社交辞令の第一歩であり、いわば大人の言葉のことです。
「こんにちは」と言ってから、「今日はいいお天気ですね」と続け、「その後、お母上のお体の具合はいかがですか」などと、相手を思いやる言葉をかけるのです。
●愛語を使う
このような思いやりある世辞は「愛語」という仏教の言葉にも通じます。曹洞宗の開祖である道元禅師の『正法眼蔵(しょうぼうがんぞう)』に出てくる言葉ですが、他人に対してまず慈愛の心を起こし、愛のある言葉を施すことです。
たとえば、新聞配達や宅配便の人に「暑いところを、ご苦労さま」とか、外食した際には「ごちそうさま。おいしかったです」と、感謝の言葉をかける。挨拶するときの「お元気ですか」とか「お大事に」なども愛語です。
道元によれば、愛語を使うことは愛情の訓練につながるそうです。そして、「愛語よく廻天す」と、言葉ひとつで相手に元気になる力を与えているのだといいます。言葉づかいそのものにも、その人間の徳が表れるのです。
●言霊(ことだま)の力を知る
言葉には不思議な力が宿ります。それを日本では「言霊」といいました。「うまくいきません」「できません」といった言葉を使ってはなりません。なぜなら、言葉は私たちの心を積極的なものに築いていくうえで最も大切な道具だからです。つまり、人生を積極的に生きていこうと思ったら、否定的・消極的な言葉は使わず、できるだけ肯定的・積極的な言葉を使うべきなのです。
異色の哲学者である中村天風は「言葉は人生を左右する力がある。この自覚こそ、人生を勝利に導く最良の武器である」と述べています。彼は、「寒いなあ、いやになる」というようなときにも、暑さ寒さを口にするのは構わないが、その後の消極的な言葉を余計としました。そして、「寒いなあ、元気が出るよ」と言って、言葉の持つパワーを使いこなそうとしたのです。 私たちはサービス業にたずさわる者として、言葉の持つ偉大な力を知りましょう。
そして、
「はい」という素直な言葉
「すみません」という反省の言葉
「おかげさまです」という謙虚な言葉
「させていただきます」という奉仕の言葉
「ありがとうございます」という感謝の言葉
これらの言葉を大いに使っていきましょう!
良い言葉を使えば使うほど、あなたの徳は高まる一方なのです。
山でさえ 声をかければ こだまする
挨拶かわす 人に徳あり 庸軒