マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2026.01

子どもとは先祖である 冠婚葬祭が命を循環させる!

●冠婚葬祭文化振興財団10周年
 わたしが理事長を務める一般財団法人冠婚葬祭文化振興財団が創立10周年を迎え、1月20日に記念パネルディスカッションおよび記念祝賀会が東京で開催されます。
 この財団は、人の一生に関わる儀礼である冠婚葬祭に代表される様々な人生儀礼の文化を振興し、次世代に引き継いでいくための事業を行い、我が国伝統文化の向上、発展に寄与することを目的として、2016年(平成28年)に設立されました。
 古来より続く冠婚葬祭文化を見直し、振興し、次世代に引き継いでいくべく、助成金の交付、儀式等への支援、講座の開催、顕彰などの支援事業を行っています。
 婚礼、葬儀を中心とする儀式文化は、小規模化と簡素化が進行しています。財団では、冠婚葬祭業界の未来のため、「儀式文化を継承し創造することで、人と人とのつながりが深まり、コミュニティが形成される」ことを各種の事業を通じて伝えています。

●小学生絵画コンクール
 財団では毎年、小学生を対象とした絵画コンクールを開催しています。テーマは「わたしのおもう結婚式」または「思い出に残っている日本のぎしき」です。一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)に加盟する約200社の互助会を通じて作品を募集。これまでの応募総数は平均500点、多い年は700点に達しています。兄弟・姉妹での応募や、幼稚園児の参加も多いです。
 審査員は同団体の役員と外部有識者が務めています。学年別に優秀賞・入選・佳作を選考し、入賞作品は最終的に作品集としてまとめ、受賞者、関連団体に配布、およびHPにて公表。このコンクールは、子どもたちに絵を描いてもらうことで、結婚式や年中行事などの人生儀礼を家庭で見直す機会を創出することが狙いです。次世代に文化を継承する取り組みとして、今後も継続していきます。
 子どもたちが実際に絵を描くことは、年中行事への関心を強め、冠婚葬祭への想像力を膨らませることですので、儀礼文化の未来を開く上で非常に大切なことだと思っています。

●『こども冠婚葬祭』の出版
 そんな中、わたしは『こども冠婚葬祭』を昭文社から刊行しました。「親子で学ぶ日本の伝統行事と儀式の作法」というサブタイトルがついており、イラスト満載で冠婚葬祭の意味と意義を説く児童書です。
 その「はじめに」を、「いまの時代、人と人とのつながりがうすれつつあると感じることがあります。けれども、わたしたちは本来、たがいに助けあい、支えあいながら生きてきました」と書きだしました。
 「冠婚葬祭」とは、人の一生における大切な節目を祝い、見送り、感謝する日本の文化です。わかりやすく言うと、「冠」は成長、「婚」は幸せな出会い、「葬」は別れ、「祭」はご先祖さまへの感謝を表します。これらの行事を通して、人は“いのちのつながり”を学び、思いやりの心を育ててきました。
 さらに、わたしは「行事のかたちが変わっても、人の心の温かさは変わりません。むしろ今だからこそ、礼を尽くし、感謝を伝える時間が大切なのです。冠婚葬祭はみなさんの心をゆたかにし、人生を輝かせてくれます」とも書きました。同書を通して、子どもたちが日本の美しい心といのちを敬う気持ちを感じてくれたら嬉しく思います。

●先祖とは子どもである!
 拙著『決定版 年中行事入門』(PHP研究所)や『リメンバー・フェス』(オリーブの木)にも書いたように、わが国における年中行事のほとんどには「先祖供養」という本質があります。そして、「先祖」とは何かという問題を考えた場合、「先祖とは子どもである」という驚くべき考えに行き着きます。
 日本人は世界的に見ても子どもを大切にする民族だそうです。そして、子どもを大切にする心は先祖を大切にする心とつながっています。日本民俗学の創始者の一人である柳田國男は『先祖の話』の中で、輪廻転生の思想が入ってくる以前の日本にも生まれ変わりの思想があったと説いていますが、その特色を三つあげています。
 1.日本の生まれ変わりは仏教が説くような六道輪廻ではなく、あくまで人間から人間への生まれ変わりであること。
 2.魂が若返るためにこの世に生まれ変わって働くという、魂を若くする思想があること。
 3.生まれ変わる場合は、必ず同じ氏族か血筋の子孫に生まれ変わるということ。

●子どもこそが先祖である!
 柳田は「祖父が孫に生まれてくるということが通則であった時代もあった」と述べ、そういった時代の名残として、家の主人の通称を一代おきに同じにする風習があることも指摘しています。
 柳田の先祖論について、昨年5月30日に帰幽された宗教哲学者の鎌田東二先生は、著書『翁童論』の中で「この柳田のいう『祖父が孫に生まれてくる』という思想は、いいかえると、子どもこそが先祖であるという考え方にほかならない」と述べています。
 「7歳までは神の内」という日本人の子ども観は「童こそが翁を魂の面影として宿している」という日本人の人間観や死生観を表わしているのではないかというのです。
 柳田國男は、「日本人の子どもを大切にするという感覚の根底には、遠い先祖の霊が子どもの中に立ち返って宿っているという考え方があったのではないか」と推測していますが、これについて鎌田先生は「注目すべき見解であろう」と述べています。
 先祖とは子どもであり、子どもとは先祖である。この魂のエコロジーを絶やさないためにも『こども冠婚葬祭』が多くのお子さんたちに読まれることを願っています。

 子どもとは先祖なりけり
  どこまでも命をつなぐ冠婚葬祭  庸軒