知識社会の到来でサンレーの存在感が大きくなる
ピーター・ドラッカーという人がいます。ウィーン生まれで、現在アメリカのクレアモント大学大学院で教える経営学者です(当時)。世界最高の経営学者であり、ビジネス界にもっとも影響力を持つ思想家です。東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、マネジメントという考え方そのものを発明しました。また、マネジメントに関わる「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」などの理念の生みの親で、それらを発展させてきました。
1909年生まれですから、もう90代半ばの年齢ですが(2005年11月11日逝去)、つい最近も『ネクスト・ソサエティ』という本を書いて、日本でもずっとビジネス書ベストセラーの一位を続けています。ドラッカーはこれまでに30冊ほどの本を出していますが、私はそのほとんどすべてを読み、彼の経営哲学および社会哲学に深く共鳴しています。ドラッカーの本はどんな書店でも必ず置いてありますし、『ネクスト・ソサエティ』は今でも平積みになっていますから、みなさんもぜひ読んでみてください。
そのドラッカーが数多くの著書で一貫して唱えているのが「知識社会」の到来です。七千年前、人類は技能を発見しました。その後、技能が道具を生み、才能のない普通の者に優れた仕事をさせ、世代を超えていく進歩を可能にしました。技能が労働の分業をもたらし、経済的な成果を可能にしました。
紀元前2000年には、地中海東部の灌漑文明が、社会、政治、経済のための機関と、職業と、つい二百年前までそのまま使い続けることになった道具のほとんどを生みだしました。まさに技能の発見が文明をつくり出したのです。そして今日、再び人類は大きな発展を遂げました。仕事に知識を使い始めたのです。仕事の基盤が知識へと移ったと、ドラッカーは述べています。
ここでいう知識とは、仕事の基になる専門知識のことです。専門知識の上に成り立つ職業といえば、医師や弁護士や公認会計士やコンピューター・プログラマーなどがすぐ思い浮かびますが、実はサンレーグループのみなさんの仕事も知識産業だと私は思います。
たとえば、葬祭ディレクター。この試験用に使うテキストである『葬儀概論』という分厚い本を最近通読してみて驚きました。思っていたよりもはるかに内容が高度で、かつ範囲が広い。仏教の各流派の教義・作法はもちろん、宗教全般、儀礼全般に医療・法律・税務といった分野まで含まれているのです。これはもう、たいへんな知識産業であると感嘆しました。その葬祭ディレクターの合格率がサンレーが全国でもトップであり、しかも他社と違って一級が非常に多い。かつ平均年齢が日本一低い。つまり、若手の一級葬祭ディレクターをサンレーは最も多く抱えているわけで、これも大いなる財産であり、誇りであります。
もともと当社は業界で最も早く「能力開発」を重視して、教育に力を入れてきました。TQC(総合的品質管理)や目標管理制度の導入などもスムーズにいきましたし、何より業界初のISO9001取得という事実がすべてを物語っています。サンレーは昔からラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)であり、知識化がますます進む業界にあって、その存在感はさらに大きくなる一方です。
葬祭ディレクターほどの難易度は現在のところありませんが、ブライダル・プロデューサーにも同じことが言えます。さらには、料理・衣裳・写真・司会……とあらゆるサンレーグループの仕事は高度な専門知識に基づく知識産業となるべきです。すなわち、プロフェッショナルとして、決してお客様というアマチュアに負けてはなりません。婚礼フロントが「ゼクシィ」を読んでいるお客様に知識で負けてはならないのです。一般に冠婚葬祭業は労働集約型産業だとされていますが、私は知識集約型産業だと確信しています。向上心を持って、さらなる勉強を心がけましょう。