マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2022.04

新入社員に最も伝えたいこと 礼儀正しい人になろう!

●新入社員を迎えて
今年も新入社員のみなさんを迎えることができました。心より歓迎いたします。
世の中の数多くある会社の中から、サンレーを選んで下さったことに感謝の気持ちでいっぱいです。みなさんは過酷な就活戦線を乗り切ってこられたことと思います。
コロナ禍によって多くの企業が苦境に陥っています。特に、いわゆるサービス業は未曾有の苦境にあります。当然ながら、新卒の採用というのは厳しくなります。みなさんの中には、「もしかしたら、どこの会社にも入れないかもしれない」と不安に思った方もいることと思います。その謙虚な気持ちをどうか忘れないで下さい。そして、サンレーと縁があったことを喜んで下さい。
わが社は冠婚葬祭をはじめ、介護施設や温浴施設などを運営する会社ですが、サービス業からケア業への進化を図っています。そして、それは人間尊重思想としての「礼」を中心とする礼業でもあります。みなさん、本当に、入社おめでとうございます。これから、一緒に新しい時代を創っていきましょう!

●「礼」とは何か
わたしは、中国哲学者の加地伸行先生と『論語と冠婚葬祭』(現代書林)という対談本を刊行しました。加地先生はわが国における儒教研究の第一人者ですが、対談では「礼」について大いに語り合いました。
「礼」は儒教の真髄ともいえる思想です。そもそも礼(禮)という字は、「示」(神)と「豊」(酒を入れた器)から成るように、酒器を神に供える宗教的な儀式を意味します。古代には、神のような神秘力のあるものに対する禁忌の観念があったので、きちんと定まった手続きや儀礼が必要とされました。これが、礼の起源であるといわれます。
こうした礼の観念が変質し、拡大していくのは、春秋・戦国時代からです。礼の宗教性は希薄となり、もっぱら人間が社会で生きていくうえで守るべき規範、つまり社会的な儀礼として、礼は重んじられるようになります。
『論語』にも礼への言及は多く、このことからも孔子の時代には、礼は儒家を中心によく学ばれていたことがわかります。
もともとの礼である「集団の礼」や「社会的な礼」とともに、徳の1つとして「個人的な礼」も実践されるようになりました。

●互いに礼をすること
孔子の門人たちにとって、礼を修得しなければ教養人として自立したことにはならないとされ、冠婚葬祭などのそれぞれの状況における立ち居ふるまいも重要視されるようになったのです。いずれにしろ、孔子にはじまる儒家は礼の思想にもとづく秩序ある社会の実現をめざしていました。
互いに礼をするということが少なくなってくることは、社会学的に考えても大問題であると述べた人物が、陽明学者の安岡正篤です。人間はなぜ礼をするのか。それにはいい答があるとして、安岡は「吾によって汝を礼す。汝によって吾を礼す」と言いました。
さらに安岡は、「本当の人間尊重は礼をすることだ。お互いに礼をする、すべてはそこから始まるのでなければならない。お互いに狎(な)れ、お互いに侮り、お互いに軽んじて、何が人間尊重であるか」と喝破しました。

●礼とは「人間尊重」「人の道」
「経営の神様」といわれた松下幸之助も、何より礼を重んじました。彼は、世界中すべての国民民族が、言葉は違うがみな同じように礼を言い、挨拶をすることを不思議に思いながらも、それを人間としての自然の姿、人間的行為であるとしました。すなわち礼とは「人の道」であるとしたのです。
そもそも無限といってよいほどの生命の中から人間として誕生したこと、そして万物の存在のおかげで自分が生きていることを思うところから、おのずと感謝の気持ち、「礼」の身持ちを持たなければならないと人間は感じたと松下は推測しました。

●礼儀正しい人はうまくいく
P・M・フォルニという人がいます。アメリカ・メリーランド州ボルチモアに本部を置くジョンズ・ホプキンス大学のイタリア文学教授ですが、長年、礼節をテーマにした講義やワークショップを行なってきました。
礼節(=Civility)という言葉の由来は、都市(=City)と社会(=Society)という言葉にあります。フォルニは、著書『結局うまくいくのは、礼儀正しい人である』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で、「礼節という言葉の背景には、都市生活が人を啓蒙する、という認識があるのです。都市は人が知を拓き、社会を築く力を伸ばしていく場所なのです。人は都市に育てられながら、都市のために貢献することを学んでいきます(上原裕美子訳)」と述べます。そして礼節とは「よい市民になること」「よき隣人であること」を指しているといいます。

●礼節ある生き方を選ぶ
フォルニは、「礼節ある生き方を選ぶということは、他者や社会のために正しい行動を選ぶということです。他者のために正しく行動すると、その副産物として人生が豊かにふくらむのです」と述べ、さらに「他人に親切にするのはよいことである」という真理は永久に色あせないと訴えます。
そして、「人生で最も重要なのは他者とのふれあいである」と断言し、「礼節を守るのは、人と人とのふれあいの質を上げる最も確実な方法です。ふれあいの質が高まれば、人生はうるおいます」と提言するのでした。新入社員のみなさんは、ぜひ、礼儀正しい人になって下さい!

人に会ひ人を重んじ礼すれば
人とふれあひ人に愛され  庸軒