マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2021.04

グレート・リセットとは何か いま、相互扶助の時代が始まる

●新入社員を迎えて
今年も新入社員のみなさんを迎えることができました。心より歓迎いたします。
世の中の数多くある会社の中から、サンレーを選んで下さったことに感謝の気持ちでいっぱいです。みなさんは過酷な就活戦線を乗り切ってこられたことと思います。
コロナ禍によって多くの企業が苦境に陥っています。当然ながら、新卒の採用というのは厳しくなります。みなさんの中には、「もしかしたら、どこの会社にも入れないかもしれない」と不安に思った方もいることと思います。その謙虚な気持ちをどうか忘れないで下さい。そして、サンレーと縁があったことを喜んで下さい。
わたしは、みなさんに大いに期待しています。なぜなら、今年の新入社員ほど、会社に入ることの喜びと社会人になることの責任感を胸に抱いている者はいあないからです。本当に、入社おめでとうございます。これから、一緒に新しい時代を創っていきましょう。

●グレート・リセット
「ダボス会議」といえば、世界のリーダーたちが連携する国際機関で、著名な政治家や実業家、学者らが招かれ、意見を交わします。2020年6月、ダボス会議を運営する世界経済フォーラムは、2021年1月に開催される年次総会のテーマを「グレート・リセット」にすると発表しました。
グレート・リセットとは、より良い世界をもたらすために、わたしたちの社会と経済のあらゆる側面を見直し、刷新することです。
世界経済フォーラムを創設したクラウス・シュワブ会長は、この「リセット」が意味するものについて、「世界の社会経済システムを考え直さないといけない。第二次世界大戦後から続くシステムは異なる立場のひとを包み込めず、環境破壊も引き起こしている。持続性に乏しく、もはや時代遅れとなった。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」と語っています。
ここでシュワブが言う「第二次世界大戦後から続くシステム」とは、「無限の成長を前提とするシステム」です。そのシュワブとオンラインメディア代表のティエリ・マルレの共著に『グレート・リセット』があります。

●人間らしさの見直し
同書には、「人間らしさの見直し」として、2020年3月のイタリアの状況に言及しています。その時期、死者が1万人を超え、新型コロナウイルス感染症による破滅的状況にあったイタリアでは、著名なオペラ歌手が近所の住人のために自宅のバルコニーから歌を披露しました。
また、医療従事者に敬意を表し、人々は毎晩声を合わせて歌いました。その後、この現象はほぼヨーロッパ全土に広まりました。助け合いの精神や、困っている人を助けようとするさまざまな行動も見られました。
市民全員が強制自宅隔離になると、人々は以前よりも人助けに時間を割き、互いにいたわりあい、このことで共同体意識が強まりました。同書には、「至るところで、親切心や寛大さ、利他主義を表すちょっとした行動が常識になりつつあるように思えた。協力という概念、共同体を重んじる考え、社会の利益と思いやりのためなら、自分の利益を犠牲にする価値観が重んじられるようになった」と書かれています。

●人間性に根ざして動く社会
ビジネス書の分野でベストセラーを連発している山口周氏は、コロナ後の社会を構想した著書『ビジネスの未来』で「エコノミーにヒューマニティを」と訴え、「ここに、私たちが向き合わなければならない本質的な課題があります。真に問題なのは『経済成長しない』ということではなく『経済以外の何を成長させれば良いのかわからない』という社会構想力の貧しさであり、さらに言えば『経済成長しない状態を豊かに生きることができない』という私たちの心の貧しさなのです」と述べています。
これは拙著『心ゆたかな社会』(現代書林)のメッセージでもあります。わたしたちの社会は、これからどちらの方向へ向かうべきなのか。それは、「便利で快適な世界」を「生きるに値する世界」へと変えていくことであり、これを別の言葉で表現すれば「経済性に根ざして動く社会」から「人間性に根ざして動く社会」へと転換させるということになります。

●「相互扶助」というキーワード
今後の社会を、優しく、愛と思いやりに満ちた、感性豊かなものにしていくためには、この「経済性から人間性」への転換がどうしても必要になります。
そして、これを実現するために必要なのは、ここ100年のあいだ、わたしたちの社会を苛み続けてきた3つの強迫、すなわち「文明のために自然を犠牲にしても仕方がない」という文明主義、「未来のためにいまを犠牲にしても仕方がない」という未来主義、「成長のために人間性を犠牲にしても仕方がない」という成長主義からの脱却が必要です。
その他にも、わたしはコロナ後の社会を予見した多くの本を読みましたが、いずれも「人間性」というものを重視しています。そして、もうひとつキーワードがあります。それは、「相互扶助」です。
ネアンデルタール人やホモ・サピエンスの遺跡からもわかるように、死者の埋葬と並んで、相互扶助は人類の本能であるとされています。わたしも、そう思います。
最近観たアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」には、相互扶助を絵に描いたような村が登場し、非常に感動しました。
人類が生き延びるには「相互扶助」という本能を呼び起こすことが必要なのです。互助会の「互助」とは、「相互扶助」の略です。「相互扶助」が最重要となるコロナ後の社会で、互助会は大きな存在感を放つでしょう。

世直しは 人と人とが 助け合ふ
心ゆたかな 人の世めざし  庸軒