マンスリーメッセージ サンレーグループ社員へのメッセージ 『Ray!』掲載 2025.05

佐久間名誉会長の銅像が完成 慈愛をもって見守ってくれる

●佐久間名誉会長の銅像
 昨年逝去した佐久間進名誉会長の銅像が完成しました。素晴らしい出来栄えです。除幕式が5月2日に行われました。場所は松柏園ホテルの本館入口横です。高名な彫刻家である片山博詞先生にお願いして作っていただきました。
 昨年のクリスマス・イブ、福岡市中央区にある片山先生のアトリエを訪ね、先生と銅像について語り合いました。日本文化の真髄は「こころ」を「かたち」にすることにありますが、銅像とはまさに「かたち」の文化です。
 日本文化を代表するものに茶道があります。茶道と言えば茶器が大切。茶器とは何よりも「かたち」そのものです。水や茶は形がなく不安定です。それを容れるのが器です。水と茶は「こころ」にも重なります。「こころ」も形がなくて不安定ですから、「かたち」としての器に容れる必要があるのです。その「かたち」には別名があります。「儀式」です。人間の「こころ」は、いつの時代でも不安定ですから、安定するための「かたち」すなわち儀式が必要なのです。
 初宮祝い、七五三、成人式、結婚式、長寿祝い、葬儀、法事法要といった日本的儀式は「冠婚葬祭」と呼ばれますが、それは日本人の一生を彩る「人生の四季を愛でる」セレモニーであると言えるでしょう。

●銅像が持つ「イメージの力」
 銅像というものも、「かたち」の文化です。“知の巨人”と呼ばれた故渡部昇一先生が監修された『日本の心は銅像にあった』(育鵬社)という本があります。
 同書で、渡部先生は「教育で大切なことは『良いイメージ』をさせること」として、「かつての日本においては、少なくとも小学生から中学生くらいまでは素晴らしい日本人や、見習うべき大人の話をたくさん教えていました。そのおかげで子供たちは良いイメージができるようになったのです。物事が成就するか否かは『イメージの力』が大きく左右します」と述べておられます。
 銅像には、しぐさや向いている方向、建てられた場所など細部にわたり多くの人々の想いが込められていますので、子供だけではなく全ての日本人に大切なことを思い出させてくれるというのです。また、その偉人の歴史的偉業の瞬間を切り取った姿をした銅像も少なくありません。渡部先生は、「ぜひ、銅像を見た時には『なぜ?』と問いかけてみてください。その『なぜ?』という問いから、その偉人の様々なエピソードや後世への影響がわかると思います」と述べられるのでした。さすがは渡部先生です。大いなる学びを得ました。

●観光地の銅像
 多くの観光地にはその土地ゆかりの銅像が建立されています。じつは、わたしは三度の飯より銅像が好きなのです。正確には、銅像の真似をして写真に写ることが好きです。これは単におふざけでやっていることではありません。「銅像」は偉大なる先人たちの憑代(よりしろ)であり、そのポーズには何かしらのメッセージが潜んでいます。
 その偉人と同じポーズをとることで偉人の志を感じることが大事なのです。これは先人に対する「礼」でもあり、その精神を学ばせていただいているのです。もともと「学ぶ(まなぶ)」という言葉は「真似ぶ(まねぶ)」から来ています。銅像の真似をすることには深い意味があるのです。

●観光力とは何か
 わたしは「観光力」というものに注目し、「その土地の放つ光を観るごとく 人の光も観たきものなり」という道歌を詠んだことがあります。みなさんは、観光力とは観光地における集客力とか人気のことだと思われるかもしれません。それは観光される側の問題ですね。しかし、わたしがお話しようとしている観光力は、観光する側の問題です。

●観光とは良き光を観ること
 佐久間名誉会長は、生前に日本観光旅館連盟や北九州市観光協会の会長などを歴任してきたことから、訓話などでは「観光」に関するものが多かったことを記憶しています。
 「観光」とは、もともと古代中国の書物である『易経』に出てくる「観國光」という言葉に由来します。「國光」とは、その地域の「より良き文物」や「より良き礼節」と「住み良さ」を指します。すなわち観光とは、日常から離れた異なる景色、風景、街並みなどに対するまなざしに他なりません。どんな土地にも、その土地なりの光り輝く魅力があります。そして、観光とは文字通り、その光を観ることなのです。
 わたしは、土地の光を観る精神は人間の光を観る精神にもつながるのではないかと思います。つまり、その人の良いところを観るということです。

●何事も陽にとらえる
 『論語』にも「君子は人の美を成す。人の悪を成さず。小人は是れに反す」という言葉があります。「君子は人の美点を伸ばし、悪い点は出さないようにするものだ。小人はその反対だ」という意味です。人類史上最高の人間通であった孔子は、「観光力」の必要性を知っていたのでしょう。
 ご存知のとおり「温故知新」も『論語』に出てくる言葉ですが、わたしは銅像を通して先人の志を学ばせていただいているのです。また、銅像は歴史的な瞬間を表現したものも多いです。
 銅像における観光力とは、「何事も陽にとらえて、明るく、楽しく、いきいきと生きる」ということに通じます。何事も陽にとらえるという陽転思考は、サンレーという太陽の会社の根幹をなすものです。名誉会長の銅像に見守られながら、世のため人のため、「天下布礼」に向けて前進しましょう!

 先人のこころが宿る銅像の
  まなざし受けて前に進まん  庸軒