平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #057

【人間学】生きよう今日も喜んで

生きよう今日も喜んで

著者:平澤興

出版社:致知出版社

 

著者は神経解剖学、特に運動生理学の研究で世界的権威として知られた人物である。しかし、科学と宗教の融けた世界を理想とし、教育にも情熱を注いだ人であった。
「今が楽しい。今がありがたい。今が喜びである。それが習慣となり、天性となるような生き方こそ最高です」
この語録には、とにかく「喜び」をキーワードにしたポジティブな言葉が溢れている。
「私は生老病死と四苦と考えず、四喜とみているのである。一年に四季がある如く、生があり、老があり、病があり、死があるということは面白くそこに喜びがあると思っている」
わたしも日頃から「四苦」を「四楽」と言い換えていたので、この言葉には驚いた。
「けしからんと怒るよりも、気の毒だなあとゆるしてあげなさい」「人間が大きくなれば、癖は飾り物になる」「教育とはいかに相手を誉めるかの研究である」など、人生の特効薬となる具体的な箴言がずらりと並ぶ。
また、わたしは本書を読了して、本書の中にも一回だけ登場する『パンセ』を連想した。近代科学史に不滅の業績をあげた不世出の天才パスカルが、信仰というものを基本として真の人間幸福の問題を追及した古典である。
二冊の本は、時代を超えて現代人の生き方に鋭く迫る人間探求の記録と言えるだろう。「人生は、にこにこ顔で生命(いのち)がけ」と説いた『生きよう今日も喜んで』は、間違いなく日本版『パンセ』である!