【安岡正篤】人生、道を求め徳を愛する生き方
著者:安岡正篤
出版社:致知出版社
わたしは最近、神道と仏教と儒教についての著書を上梓したが、そのときに最高のテキストとなったのが本書だった。
とにかく、神仏儒に道教、キリスト教を加えた諸宗教が日本人に与えた影響を俯瞰的に考察し、日本人の「こころ」の源流が明快に理解できる。使える日本思想史であり、かつ、優れた日本人論でもある。
昭和11年、日本が軍国主義化し、実業界も労働界も迷走する中で、日本人に必要なのは人格と識見と、日本古来の「まつり」や「むすび」の心であると安岡正篤は述べる。 そして、「今、少しく深いものに目醒なければなりません。もし、単なる理論とか方策によって世の中が救われるならば、我々の先祖に偉大なる人物はたくさんおったのですから、千年二千年前に、我々のユートピアを実現してくれているはずです。それが幾度も治乱興亡を繰り返しているということは、理論や闘争のみによって経世済民はできないということを物語っているのです。ことに、東洋、日本の国家において然りです。 そういう点において日本の改革ということは決して軽々と外国の模倣的思想、行動に出るを許されないのであります」と喝破するのである。
これはそのまま現代日本人へのメッセージでもあると感じる人は多いはずだ。
この本には安岡正篤の学識の深さと洞察の鋭さとともに、燃えるような憂国の想いがあふれている。