平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #006

【おすすめ】坂の上の雲

坂の上の雲

著者:司馬遼太郎

出版社:文芸春秋

 

~皇国の興廃この一戦に在り~日本の存亡をかけた戦い「日露戦争」。日本海海戦に置いて我が国の連合艦隊がロシアのバルチック艦隊に勝利し戦争は終局に向かった。この圧倒的勝利により日本は国際社会にその地位を認められ、今日に至る繁栄の礎を築いたのである。そして5月27日、日本海海戦100周年を迎えた。
明治初期、日本は西欧諸国の脅威を意識しながらも「近代化」を高い優先順位で推し進めていた。他国の進歩には素直に驚き、真摯に学ぼうとする純粋な日本人の姿勢がロシアという大国と渡りあう上での基本条件であったことを本書では感じる事ができる。自らの欠点を認識し、不足するものはとにかく留学で学び、造れない戦艦は英国から購入するという当時の日本政府の考えは、何と斬新でかつ柔軟性にあふれていたか。
『文芸春秋』において「20世紀に書かれた本の中で後世に残すべき作品」「日本を見つめ直す最良の歴史書」という読者へのアンケートでそれぞれ堂々第1位に選ばれた同作品。超ベストセラーであり、国民文学と言っても過言ではない。
また熱狂的なファンが多い作品としても知られ、司馬ファンにとってはバイブルともいえる小説である。この小説が日本国民の精神に及ぼした影響は、計り知れないほど大きいと思われる。「司馬史観」という言葉さえも生まれた。
それは近代日本の歴史をすべて否定的に見る—-いわゆる「自虐史観」とは異なり、日本人に大きな勇気を与えてくれる超大作である。