【ドラッカー】新訳 現代の経営
訳:上田惇生
出版社:ダイヤモンド社
ドラッカーは、本書を世界で最初の経営書であると自負している。マネジメントを独立した機能としてとらえ、マネジメントすることを特別の仕事として理解し、経営管理者であることを特別の責務としてとらえた最初の本だというのである。本書は「経営管理者は、事業に生命を与える力にあふれた存在である。彼らのリーダーシップなくしては、生産のための資源は、単なる資源にとどまり、生産は行なわれない」との力強い書き出しで始まっている。
そして本書は、今日のマネジメントとともに、明日の事業の創造について述べた最初の本である。さらに重要なことは、企業を全体として見た最初の本である。それ以前のマネジメントに関する本はすべて、そして現在にいたってもそのほとんどの本は、マネジメントの一局面を見ているにすぎない。しかも通常、組織・方針・人間関係・権限など企業の内部しか見ていない。
それに対して本書は、企業を三つの次元から見る。第一に、企業自らの外部、すなわち市場や顧客のために、経済的な価値を生み出す機関としてみる次元。
第二に、人を生産的な存在とするための組織、したがって統治の能力と価値観を持ち、権限と責任の関係を規定する人間的、社会的機関としてみる次元。
第三に、社会やコミュニテイに根ざすがゆえに、公益を考えるべき社会的機関として見る次元。
さらに、本書は出版のころには言葉さえほとんど存在していなかった企業の社会的責任について論じている。
これらの視点によって、今日われわれがマネジメントの体系としているものを本書は生み出したのである。企業の機能はマーケティングとイノベーションであることを明確に示した本書は、世界中の企業と経済に直接の影響を与え続けている。
本書の特徴は、シアーズやAT&Tをはじめとした具体的かつ詳細な事例が列挙されている点である。発見のエネルギーに満ちており、古典でありながら、とにかく面白い。コンサルティングで得た経験を惜しみなく示しており、現代においても意味を失っていない。
経営の根本原理を考えるために、あるいは経営者としての原点に立ち戻るためにバイブルとなる本である。翻訳者の上田惇生氏は、経営を学ぶために必ず読まなければならない本を一冊あげるならば、本書『現代の経営』であると断言している。