平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #053

【人間学】人生二度なし

人生二度なし

著者:森信三

出版社:致知出版社

 

哲人教育者・森信三が中学、高校を出て働いている人たちのために書いた本だが、青少年のみならず、広く一般の人々にも読まれてきたという。人生そのものについて考えるべき基本的な問題が書かれているからだろう。
本書の最後には、「人生二度なし」と題された講演録が掲載されている。昭和36年に「職業訓練所」で学習している青少年のためになされた講演である。森信三は、まず「どうぞ諸君、ゆっくりと、固くならないように聞いて下さい。」と生徒たちに呼びかけた後、技術を身につけて「学歴にたよらぬ生き方」の尊さを説き、しかし「教養とたしなみ」の重要性を強調し、ついに「人生二度なし」という自らの人生観の根本を示す。
「この人生というものは、二度と繰り返すことのできないものである。だからわれわれは、自分がもって生まれた能力を、ぎりぎりのところまで発揮した上で棺桶に入るというくらいの意気込みがなくてはいけない」
著者は、卒業後の心得にまで配慮し、訓練所を出たら必ず専門の雑誌を二種類は読むこととか、スポーツ新聞や週刊誌を絶対に読まないこととか、「岩波新書」を読むと教養がつくとか、25歳まではタバコを吸わないこととか、実に細かいところにまで生徒たちにアドバイスする。父親が自分の本当の子どもに対するように。哲人教育者がまるで故郷の親父のような温かさを持っていたことを知り、わたしは大きな感動をおぼえた。