【人間学】小さな人生論2
著者:藤尾秀昭
出版社:致知出版社
月刊誌『致知』の編集長による一文を集めたシリーズ二作目。長年にわたり人間学を追求してきた著者ならではの人間愛にあふれた文章が心に染み入る。
しらくもという皮膚病と勉強ができなかったため、惨めで辛い少年時代を送った人物が、読書によって発奮し、みんなから頼りにされる農業指導者と化したエピソードの後に、「感動は人を変える。笑いは人を潤す。夢は人を豊かにする。そして、感動し、笑い、夢を抱くことができるのは、人間だけである。天から授かったこのかけがえのない資質を育み、さらに磨いていくところに、前向きの人生は拓けるのではないだろうか」
また、15歳の重度脳性マヒの少年が、その短い生涯の中でたった一篇、命を絞るようにして書き残した「ごめんなさいね おかあさん」ではじまる詩を紹介した後に、
「人は皆、一個の天真を宿してこの世に生まれてくる、という。その一個の天真を深く掘り下げ、高め、仕上げていくことこそ、各人が果たすべき人生のテーマといえるのではないか」と、結ぶ。この少年への深い共感と追悼の念を込めた一文を読み、わたしは泣いた。
本書には、『論語』や『大学』や中江藤樹や二宮尊徳や安岡正篤など、人間学を学ぶ上で欠かせない書物や先賢が多数登場するが、そのすべては支流となって『致知』という大海に穏やかに流れ込んでいる。その大海に小さな舟を浮かべ、人生を豊かにする言葉を釣り上げている釣り人こそ、藤尾秀昭その人だ。