【ドラッカー】新訳 経営者の条件
訳:上田惇生
出版社:ダイヤモンド社
世界最初の経営書『現代の経営』の内容をさらに具体的にした本である。とにかく「成果をあげる」ことの重要性を訴え、そのための方法論を提示している。
普通のマネジメントの本は、人をマネジメントする方法について書いている。しかし本書は、業績をあげるために自らをマネジメントする方法について書かれている。他の人間をマネジメントできるなどということは、証明されていない。しかし、自らをマネジメントすることは、常に可能であるとする。
本書の冒頭には「エグゼクティブ、すなわち物事を成すべき地位にある者の仕事は、成果をあげることである」の一行がある。
ドラッカーは長年、いろいろな組織のエグゼクティブと働いてきたが、いまだかつて一人として、天性のエグゼクティブ、生まれつき成果をあげるようなエグゼクティブに出会ったことはないという。
成果をあげるよう努める者はみな、成果をあげる力をつけてきている。そして彼らのすべてが、日常の実践によって、成果をあげることを習慣にしてしまっている。
他の人間の仕事ぶりに責任をもつ経営管理者であろうと、主に自分の仕事にだけに責任をもつ独立したスペシャリストであろうと、成果をあげることに対して、報酬を支払われることに変わりはない。成果をあげないならば、いかに多くの知力と知識を使い、いかに多くの時間を使おうとも、業績とはならない。
19世紀には、肉体労働者は経済的な目的だけをもち、経済的な報酬だけで満足すると信じられていた。しかしそのような考えは、賃金が最低生活水準を超えた瞬間、もはや事実ではなくなった。
知識労働者も経済的な報酬は要求するし、報酬の不足は問題である。しかし、報酬の存在だけでは十分ではない。機会、達成、自己実現、価値を必要とする。知識労働者は、自らを成果をあげるエグゼクティブにすることによってのみ、それらの満足を得る。
エグゼクティブの成果をあげる能力によってのみ、現代社会は、二つのニーズ、すなわち個人からの貢献を得るという組織のニーズと、自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個人のニーズを調和させることができる。したがって、まさにエグゼクティブは、成果をあげる能力を習得しなければならないのである。
本書は経営者にとっての修身の書であり、万人のための帝王学としてのマネジメントの教科書である。