平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #009

【おすすめ】武士道 ~人に勝ち、自分に克つ強靱な精神力を鍛える~

武士道 ~人に勝ち、自分に克つ強靱な精神力を鍛える~

著者:新渡戸 稲造  訳・解説:奈良本 辰也

出版社:三笠書房

 

『武士道』と聞いて、皆さんは何を連想するだろうか。とりあえず思いつくものとしては、時代劇、日本刀、そして切腹など。本書は『武士道』について、海外向けに英文で紹介された著作の翻訳版である。欧米人向けの著作のため、内容に聖書や哲学、世界史などを引用し、分かりやすく比較、解説されている。このため却って私達日本人にも理解しやすい内容となっている。武士はなぜ切腹をするのか?戦闘のプロである武士が、なぜ歌を詠むのか?欧米の価値観からは程遠い日本人独自の美徳や規範、「恥」の概念について、著者はその基盤ともなった「武士の掟」としての「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義・克己」の8つの項目を挙げ、いかにそれらが密接に関わり合い、武士の行動を律し、決定しているのかを解説している。それらは日本の風土と、仏教、儒教、神道、陽明学などと様々な融合を経て日本人独特の美徳や価値観、生き方、規範を造り出し、『武士道』という独特の価値観を花咲かせた。そして封建社会が終わった後も、歴史の変遷を通し、日本の原動力や行動の指針として子孫に脈々と受け継がれてきたのである。日本人とは何なのか?武士道とは?日本人の原点を見直し、私達がほぼ無意識に受け継ぎ、そして私達の中でひっそりと生き続ける『サムライ』に気づかせてくれる慧眼の書である。