【人間学】二宮尊徳一日一言
寺田一清編
出版社:致知出版社
日本人における道徳のシンボルである二宮尊徳の「一日一言」。尊徳といえば、戦前の国定教科書に勤勉・倹約・孝行・奉仕の模範として載せられ、全国の国民学校の校庭には薪を背負い本を読む少年時代の銅像が作られた。
本書には、世界的思想家・二宮尊徳の凄みがあふれている。とにかくスケールが大きい。
「神道は開国の道なり。儒学は治国の道なり。佛教は治心の道なり。」として、神儒佛の正味のみを取り、人の世の無上の教えとして「報徳教」と名づける。また、それを「神儒佛正味一粒丸」と薬にたとえて、その効能の広大さをアピールする。
常に「人道」のみならず「天道」を意識し、広大な太陽の徳を説いた。それは大慈大悲の万物をいつくしむ心であり、尊徳の「無利息貸付の法」も、この徳の実践の一つなのだ。
「勤倹・分度・推譲」の思想を唱え、600以上の大名旗本の財政再建および農村の復興事業に携わった尊徳。彼が同時代のヘーゲルにも比較しうる弁証法を駆使した哲学者であり、ドラッカーの先達的な経営学者でもあったことが、本書を読むと理解できる。
最後に、読書についての一言を紹介したい。
「書を読む者ぜひとも人を済(すく)ふの心を存しねばならぬ。何となれば、書は人を済ふの道を書き載せたるものなり。故に之を読んでその心を存しなければ、何の益があろう。」である。真の読書とは、単に物知りになることではなく、救国済民の心がなければならないのだ。このことを心して、本書をお読みいただきたい。