平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #005

【おすすめ】ローマ人の物語 ~ローマは一日にして成らず~

ローマ人の物語 ~ローマは一日にして成らず~

著者:塩野七生

出版社:新潮社

 

本著はイタリア史の第1人者である塩野七生による、古代ローマ帝国史の第1巻にあたります。有名なユリウス・カエサルやクレオパトラはまだ登場しませんが、タイトルの諺にもなった、ローマが一日にして成らざる様を、著者自身の鋭い視点から展開させていく。ローマはなぜあれほどの発展を遂げたのか?『知力ではギリシア人に劣り、体力ではケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るのがローマ人である』とローマ人自身が認めていた様に、その繁栄への道は決して平坦なものではなかった。ゆっくりと、時には後退し、しかし着実に発展していくローマ。人間に寛容な多神教で、王政、貴族制、民主制のいいとこどりの様な、独自の政治体制を確立し、征服した国々を、宗教や人種の違いなどおかまいなく貪欲にとりこんで“同化”していく。こうしたローマの姿勢を、著者は「ローマ人の開放性」と表現し、これこそが古代ローマの真の遺産であるとしている。
二千年の時を隔てた現代でも、世界の多くの人々が未だ他者を排斥し、国家間や文明間では抗争や対立を続けている。こうした時代だからこそ、改めて古代ローマ帝国を再評価し、「ローマ人の開放性」を学ぶ時なのかもしれない。