【人間学】安岡正篤一日一言
監修:安岡正泰
出版社:致知出版社
日本が誇る東洋哲学の巨人・安岡正篤の「一日一言」である。数多い著者から実子によって選び抜かれた言葉が集められている。
安岡教学の特徴でもあるが、自らの思想に数字をからめて道を説いたものが多いことに気づく。数字でまとめられると、わかりやすいし、何よりも読者の興味を引きやすい。
たとえば、三。有名な「思考の三原則」というのが出てくる。すなわち、第一は、目先に捉われないで、出来るだけ長い目で見ること。第二は物事の一面に捉われないで、出来るだけ多面的に、出来得れば全面的に見ること。第三に何事によらず枝葉末節に捉われず、根本的に考えるということ。
たとえば、四。「政治の四患」という条がある。第一は偽、第二は私、第三は放(放埓つまり無責任)、第四は奢(奢侈)である。
たとえば、五。世に「五交」というものがあるという。一を勢交(勢力者に交を求める)。二を賄交(財力ある者に交を求める。三を談交(能弁家に交を求める)。四を窮交(困窮のため苦しまぎれに交を求める)。五を量交(利害を量って得な方に交を求める)。
このように安岡正篤は、数字を使って思想を整理する天才であった。後世に彼の模倣者が多数登場するが、彼こそは偉大なコンセプトの編集者だったのである。
最後に、読書についての一言を紹介したい。
「読書して疲れるようではまだ本物でない。疲れた時読書して救われるようにならねばならぬ」である。こんな凄い読書論にふれたことはない。ぜひ、疲れた時にこそ本書を読んでいただきたい。