平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #027

【安岡正篤】活学講話 東洋人物学

活学講話 東洋人物学

著者:安岡正篤

出版社:致知出版社

 

昭和38年に開催されたセミナーの講話録である。講話だから、とても読みやすい。
東洋学の泰斗である安岡正篤が、日本のリーダーたちに提唱する「人物学」が本書の中心をなす。しかし、意外にも西洋の書物が多数登場してきて興味深い。
若き日にギボンの『ローマ帝国衰亡史』、プルタークの『英雄伝』、シュペングラーの『西洋の没落』などを原書で読破した。
その他にも、エマースンの『代表的偉人論』や、アイゼンハワーの『回顧録』や、マックス・ピカートの『騒音とアトム化の世界』や、ウォルター・リップマンの『ザ・パブリック・フィロソフィー』などなど、さまざまな本が次から次に登場する。
安岡正篤は、これらを読み込み、しっかり自らの東洋人物学に応用しているのである。マルクス・レーニン主義についても幾度となく本書で言及しているので、きっと『資本論』も精読していたに違いない。そういえば、かのドラッカーが世界的ベストセラー『断絶の時代』を発表したとき、日本でいちはやく評価した人物こそ安岡正篤だった。 彼は同書のコンセプトが世代の連続としての「孝」にあることを見抜いたのである。
もちろん、本書には西洋の書物以上に数多くの東洋の書物が登場する。どれだけの本を読み、どれほど勉強していたのか想像もつかないほどだが、安岡正篤はそれを単なる知識に終わらせず、活きた学問としてリーダーたちに伝授した点が偉大である。だから、本書の書名には「活学講話」と記されているのだ。