平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #021

【おすすめ】身につけよう!江戸しぐさ

身につけよう!江戸しぐさ

著者:越川 禮子

出版社:ロングセラーズ

 

本著は、「江戸しぐさ(思草)」の第一人者である越川禮子氏の著作である。
江戸しぐさ(思草)とは、もともと江戸時代に商人の間で受け継がれてきた生活や商売における哲学、商人道である。本来、文章化を禁止され、先人達の実践と口伝によってのみ受け継がれてきた。著者は、江戸しぐさの文章化の重要性にいち早く気付き、その後継者とも言うべき芝三光氏に弟子入りを懇願、その後、タブーであった江戸しぐさの文章化に踏み切った。現在、その努力が実を結び始め、明治政府の迫害で一度は廃れたかに見えた江戸しぐさは、日本各地でブームとなり、道徳教育として教育現場にも取り入れられつつある。
また、この江戸しぐさには、「講」という相互扶助を目的とした会合が重要な役割を担っていた。この「講」において、老若男女が一同に会し、公共性をもった思いやりある人間となるためのトレーニングが行われたのである。これは、人口密度が高く、人々がひしめき合って暮らしていた江戸で暮らす商人達が、弱肉強食の競争社会だけでは、いずれ社会は破綻がくるという事に気付いていたからに他ならない。『互助共生と相互扶助』これこそが江戸しぐさの真価であり、世界に誇る日本の叡智の一つであると言える。
かつて、日本の近世において発達し、究極の形にまで進化を遂げた江戸しぐさ。本著はその先人達の叡智が詰め込まれた、まさに知恵袋というべき著作なのである。