【安岡正篤】先哲講座
著者:安岡正篤
出版社:致知出版社
安岡正篤は「世の中は一体どうなっているのか、どうすればよいのか」という言葉を耳にするたびに、『論語』の「子曰く、吾れ嘗て終日食(くら)わず、終日寝(い)ねず。以て思う、益無し。学ぶに如(し)かざるなり」という言葉を思い出したという。
現在われわれが驚いているさまざまな騒動なども、過去の書物にちゃんと書いてある。
世間を騒がす現象は、理由も原因もなく突然起こることはない。歴史の本をみればみな出ているのだ。
だいたい人類が人間らしい生活をするようになってから五千年である。この間に起こった出来事を調べてみると、本質的にはすでに経験した過去の現象の繰り返しにすぎない。現在の諸問題についても、「どうなるのか」などと余計な雑念や妄想に時間をかけるよりも、真剣に歴史を学ぶべきだ。そうすれば、その答案、あるいはその解決策というものは全部書いてあるのである。
よって、現代を知ろうと思えば、歴史と先哲に学ぶべし。本書には、『論語』をはじめ、『六韜三略』などの兵書、広瀬淡窓や佐藤一斎、さらにはユダヤ教の聖典『タルムード』から、パスカル、ルソー、ヒルティ、ラ・ロシュフーコーなどなど、古今東西の先哲たちの言葉が生き生きと紹介されている。
わたしも、経営などの現実的問題を考えるうえで何よりも読書を活用する人間だが、他ならぬ安岡正篤その人が最も有効なアドバイザーであることは言うまでもない。