平成心学塾 図書篇 ブック・セレクション #043

【人間学】「仕事の達人」の哲学

「仕事の達人」の哲学

著者:渡部昇一

出版社:致知出版社

 

大正から昭和の初期にかけて、日本に「修養」という概念を確立し、それを核として数々の雑誌を創刊し、講談社という世界的な出版社の礎(いしずえ)を創り上げた男、野間清治。彼は、江戸時代に隆盛を極めた心学的なアプローチを完全復活させて、「日本人であれば誰でも理解できる」という共通理解の水準を高めた人物であった。
石田梅岩の心学では神道・仏教・儒教のそれぞれの良い部分を取り入れた「人間主義」をもって、日本の商人哲学の基本を作った。その思想的後継者にあたる人物が二人いると著者は述べる。一人は近代日本最大の実業家・松下幸之助であり、彼の心学は「PHP」思想として結実した。もう一人が野間清治であり、心学を重んじる彼の理想は「修養」へと向かう。
大切なことは、人間の魂に、自分の精神に、磨きをかけること。こうした心学、あるいは修養の意義をよく知っていた野間は、出版界の伝説ともなっている『修養全集』を発刊する。その第一巻には、孔子、釈迦、キリスト、ソクラテス、果てはマホメットまでが一堂に会しているのである。
野間は、人類が宗教を超えて仲良くし、世界が平和になることを夢見ていたのだ。こんな野間こそは松下幸之助と並んで、日本人が世界に誇るべきユニークな思想家であると著者は断言する。そして、壮大な志を抱いた快男児は「仕事の達人」でもあった。彼の仕事哲学、人生を成功へと導く鉄則が満載の本書を読むと、ものすごく元気が湧いてくる!